地層処分シンポ、スウェーデンSKB社他招き意見交換
高レベル放射性廃棄物の処分事業が進展しているスウェーデンの実例に学びながら、今後の日本における処分地選定について考えるシンポジウム(資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構主催)が3月28日、都内のホールで開催され、処分場建設予定地となったエストハンマル市のヤーコブ・スパンゲンベリ市長他からの発表を受け、安全性、合意形成、地域共生などを中心に意見交換を行った。
スウェーデンでは、消費電力の約4割を賄っている原子力発電で発生する使用済み燃料は、再処理せずキャニスタ―に封入して地層処分することとしており、実施主体の核燃料・廃棄物管理会社(SKB)は2009年に、処分場建設予定地としてエストハンマル市のフォルスマルクを選定した。
スパンゲンベリ氏、SKB社のサイーダ・エングストレム副社長、総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物ワーキンググループの委員長を務める増田寛也氏(野村総合研究所顧問)らが登壇して行われたパネルディスカッションで、安全性への信頼に関し、スパンゲンベリ氏が「規制当局に対する信頼が重要」と指摘したのに対し、増田氏は、2015年5月に改定された地層処分基本方針に原子力規制委員会の役割が明記されたことをあげた上で、推進側とは独立した専門性ある規制組織のあり方について「スウェーデンからキチンと学ぶ必要がある」などと述べた。
また、国民理解と合意形成に関し、消費者の立場から、秋庭悦子氏(NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長)が、日本では年内に国が「科学的有望地」の提示を目指していることを踏まえ、「国民皆が考える必要がある」として、スウェーデンにおける全国規模の広報活動について尋ねると、エングストレム氏は、「広報活動ではなく対話を醸成することだ」と述べ、「話す」よりも市民の声に「耳を傾ける」ことの重要性を強調した。一方、資源エネルギー庁の小林大和・放射性廃棄物課長は、地層処分基本方針改定を受けて、全国各地でのシンポジウム開催を通じ理解活動に努めていることをあげ、「こういう問題があるのをまず知ってもらうステージにある」などと、スウェーデンに遅れをとる日本の処分地選定の現状を述べた。
ディスカッションの中で、エングストレム氏は、SKB社で学校教員を対象とした教育プログラムも実施していることを紹介したが、シンポジウムに訪れた小学校教員より、福島第一原子力発電所事故の影響から「子供たちは原子力の恩恵をあまり受けていない」として、放射性廃棄物処分や廃炉に関する世代間公平性について意見があったのに対し、同氏は、原子力発電所がすべて閉鎖され廃棄物の処理処分が残されているイタリアを例に「短期的ではなく長期的に考える必要がある」などと、問題の難しさについて同調した。