JANSI、競争環境下での原子力安全確保などテーマにパネル討論

2016年4月8日

JANSISYMPO 原子力安全推進協会(JANSI)は4月7日、2015年度の活動成果を報告する「アニュアル・コンファレンス」を都内ホールで開催し、その中で、原子力界で最近注目される事業環境の変化や再稼働を巡り、安全をどのように確保するかをテーマに、CANDUエネジー社社長兼CEOのプレストン・D.スワフォード氏らを招きパネル討論を行った。
 「競争環境の下で原子力安全を確保するために」をテーマに基調講演を行ったスワフォード氏は、競争力を維持するため、人員配置の効率化、定検作業の改善などにより、発電所の効率性を向上させることが最重要とするとともに、「競争力と原子力安全は両立できる」ことを強調し、合理的な安全規制の必要性と、必要ない安全要求とのバランスを適切にとることが、競争市場では非常に重要だと述べた。さらに、同氏は、米国を例に、1990年代の市場改革後、原子力発電の稼働率が飛躍的に向上しただけでなく、プラントの安全性も改善されてきたことをデータで示したが、一方で、天然ガス価格の変動など、市場の不安定性に影響され、原子力が競争力を失うリスクが残っていることも指摘した。
 これを受け、パネル討論で、関西電力社長の八木誠氏は、電力自由化の進展など、原子力事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、発注方法の工夫他、効率化に取り組んでいる現状を述べた上で、「効率性を追求するあまり、安全性をおろそかにすることは絶対にあってはならない」と、安全性確保が大前提であることを強調した。さらに、中部電力社長の勝野哲氏も、福島第一原子力発電所事故を踏まえた浜岡原子力発電所の安全性向上対策について述べ、これら取組へのJANSIによる第三者レビューの有効性にも言及した。
 原子力では事業者がトラブル情報を共有する「ニューシア」というシステムがあるが、他産業の例として航空業界から、日本航空機操縦士協会副会長の井上伸一氏が登壇し、安全に影響しうる事象を自発的に報告させ一般にも公開する「VOICE」などを紹介し、登壇者らの関心を呼んだ。座長を務めた電力中央研究所社会経済研究所長の長野浩司氏より、安全確保に関するユーザーとメーカーとの連携について質問があったのに対し、井上氏は、「航空の場合、100、1,000のオーダーで同じ機種が作られる。どこかで不具合があれば、メーカーからユーザーにすべての情報が行き渡る」などと応えた。
 また、長期の建設期間、自由化進展、事故、訴訟など、原子力に伴う事業リスクについて述べた国際環境経済研究所理事の竹内純子氏は、原子力安全強化への動機づけの必要性を強調し、規制者にもそれを組み込んだ制度設計がなされることを求めた。スワフォード氏の講演に関連し、八木氏が「米国のパフォーマンス向上にはINPO(原子力発電運転協会)の存在があるのでは」と述べると、竹内氏は、日米の原子力規制委員会の活動原則を示し、日本では「漠としている」一方、米国では「判断の基準になりうる具体性がある」などと対比した上で、日本でもより合理的な規制制度に改善していく必要を強調した。