「福島第一廃炉国際フォーラム」がいわき市で開催

2016年4月11日

壇上に会するフォーラム発表者ら

壇上に会するフォーラム発表者ら

 福島第一原子力発電所の廃炉について、事故から5年を迎えるのを契機に、国内外の専門家らが集まり話し合う「福島第一廃炉国際フォーラム」(経済産業省、原子力損害賠償・廃炉等支援機構主催)が4月10、11日、いわき市内のコンベンションホールで開催された。1日目は、原賠支援機構の山名元理事長、OECD/NEAのウィリアム・D.マグウッド事務局長、IAEAのファン・C.レンティッホ事務局次長の講演を受け、廃炉を巡る地域社会とのコミュニケーションをテーマに議論した。山名氏は福島第一で取り組まれてきた汚染水対策を踏まえ「福島廃炉はリスク低減の取組」と、レンティッホ氏は事故後のIAEAレビューミッションを率いた経験から「オンサイトの廃炉とオフサイトの復旧との調整は不可欠」と、またOECD/NEAが進めている多くの福島支援プロジェクトについて紹介したマグウッド氏は「利害関係者との対話を通じ信頼、情報を得た上での意思決定が重要」などとそれぞれ述べた。

パネル討論の模様

パネル討論の模様

 本フォーラムは、2015年の福島第一廃止措置中長期ロードマップ改訂に際し掲げられた「徹底した情報公開を通じた地元との信頼関係の構築」を目指し開始したものだが、今回初開催に際し冒頭、主催者を代表し挨拶に立った林幹雄経産相は「国内外の英知結集に加え地域の皆様の信頼構築が不可欠」と、来賓として会場を訪れた内堀雅雄福島県知事は「福島の真の復興には、一刻も早い汚染水の解決と廃炉の安全かつ着実な進展が不可欠」と、開催の意義を強調するとともに実りある議論に期待を寄せた。
 地域社会とのコミュニケーションに関する討論で、国内17か所の原子力施設でクリーンアップに取り組む英国原子力廃止措置機関(NDA)のジョン・クラーク総裁は、施設が閉鎖に向かうことにより地域経済に悪影響が及ぶ可能性を認識し、雇用創出などを重点に、利害関係者との対話に努めていることを述べ、セラフィールド原子力施設を立地するコープランド市のマイク・スターキー市長も、重大トラブルが風評被害を引き起こした過去を振り返る一方で、事業者と海洋汚染を懸念する地元が直接対話し有効な対策技術が生まれたノルウェーの事例を紹介し、「成功を祝いオープンに話し合う」重要性を強調した。

フォーラムでは廃炉・汚染水対策に貢献した作業チームへの感謝状授与も行われた

フォーラムでは廃炉・汚染水対策に貢献した作業チームへの感謝状授与も行われた

 また、福島第一、第二原子力発電所に勤務経験のある一般社団法人AFDの吉川彰浩代表理事は、昨夏設立したAFDが実施する地域向け廃炉学習会や福島第一見学会について紹介し、「『廃炉』と暮らすことを自身の言葉で説明できることが必要」と、女性の視点からエネルギー問題を考える有識者会議を立ち上げた慶應大学政策・メディア研究科の遠藤典子特任教授も「情報は一方向だけでなく共感すること」などとし、対話の重要性が改めて認識された。

技術展示会も行われ多くの人が訪れた

技術展示会も行われ多くの人が訪れた

 東京電力から福島第一廃炉カンパニーの増田尚宏プレジデントが、情報発信を巡って生じた問題の改善状況を強調する一方で、被災地住民として登壇した「原発震災を語り継ぐ会」主宰の高村美春氏より、説明の難解さゆえの不信感が呈されたのに対し、マグウッド氏は、米国原子力規制委員会委員を務めていた頃、ある発電所のトラブル発生時に住民から基本的な質問ばかりが浴びせられた経験を振り返り、「人は、組織を信用するのでなく人を信頼する。継続的な対話が必要」と述べた。
 本フォーラムの2日目は、燃料デブリ取り出し、廃棄物対策などをテーマに議論がなされた。