【第49回原産年次大会】セッション2「この国の未来とエネルギー問題」
「第49回原産年次大会」は2日目の4月13日、「この国の未来とエネルギー問題」をテーマに、福島第一原子力発電所事故を経て、2015年に新たな「エネルギーミックス」が策定された今、将来日本が向かう社会像を見据えながら、エネルギーを巡る課題について議論し、「原子力発電の新たな価値」を模索した。
資源エネルギー庁で「エネルギーミックス」の策定審議をリードした小松製作所相談役の坂根正弘氏は、基調講演に立ち、まず、世界の人口がこの100年余りで急増し都市化が進んだことにより、資源、エネルギー、食料、水、地球環境、医療が大きな課題となっていると警鐘を鳴らし、最近の原油価格下落に言及しつつも、「ウランも含め資源は長い目で考えれば枯渇していく。どうやって長く使っていくのか」と問題を提起した。さらに、同氏は、地球の歴史46億年を「地球誕生を元旦とした1年のカレンダー」に例え、恐竜の時代は1億2,000万年続いたが「12月15日から25日までの10日間」、現生人類ホモサピエンス出現は「12月31日の23時37分」、この100年は「年越しまでのわずか0.7秒間」としたほか、この先の化石燃料の可採年数を今後150年間と見通し「あと1秒しかもたない」などと、地球が長い年月をかけて蓄積してきた資源を人類が急激にむさぼってきたことを説いた。「エネルギーミックス」の議論で「資源のない日本は省エネと再生可能エネでどこまでやれるか」と繰り返し強調してきた坂根氏は今回、150年後の日本の姿について、「人口は3,000万人位にまで減少するが、2人に1人が65歳以上となる」と述べ、将来のエネルギー問題は、少子高齢化でさらに深刻化するとした上で、「『S+3E』(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合)のバランスの中でしか答えは出せない」と結論付けた。
これを受けて行われたパネル討論では、コメンテーターとして東京大学大学院で環境システム学を専攻する須田紗耶加氏が次世代を担う若手の立場から意見を述べるなどした。
坂根氏の講演を踏まえ、同じく政府のエネルギーや地球温暖化に関する審議会に参画している地球環境産業技術研究機構主席研究員の秋元圭吾氏も、世界の経済成長と電力消費量との関係や、COP21で合意された「パリ協定」に掲げる「2度目標」(平均気温上昇を産業革命以前に比べ2度C未満に抑える)達成に向けた日本の電源構成など、定量的データを示した上で、「S+3E」の総合的なバランスの重要性を述べた。また、東北大学工学研究科教授の中田俊彦氏は、地域から国へ広がる「空間軸」、過去から未来へ向かう「時間軸」、「価値の多様化」を図示しながら、持続可能な地域エネルギー社会の全体像を、笹川平和財団理事長の田中伸男氏は、福島第二原子力発電所を活用した福島第一燃料デブリ処理など、新たな原子力技術の構想をそれぞれ披露した。
パネリストの間で、省エネや再生可能エネ導入については、推進していく必要性の一方で、いずれも諸々の課題があるとの認識に至り、原子力については、コストや安定供給の優位性から「親和性が高い」との価値が認められたなどと、討論のモデレーターを務めたフリーアナウンサーの馬場典子氏がまとめ上げた。須田氏は、「原子力は太陽光や風力などと比べて、国民が身近に感じにくいと思うので、メディア発信や教育にもっと力を入れるべき」などとコメントした。