原子力損害賠償制度専門部会 法的整理と免責規定について議論

2016年4月19日

DSCF5992 原子力委員会の第8回原子力損賠賠償制度専門部会が4月18日、開催された。今回の議論では、原子力発電所事故時の制度について法的整理や免責規定などを議論した。
 現行の原賠制度では、損害賠償措置や原賠・廃炉機構による資金援助等で原子力事業者を債務超過にさせず、被害者への迅速かつ適切な賠償や事故収束作業・廃炉作業等を行うことが可能な仕組みとなっている。このことについて、株主や債権者等ステークホルダーにも公正な負担を求めるよう法的整理が行われた場合、法的整理によって事故対応の迅速化を妨げてしまうとする意見が出され、慎重にすべきとの見方が多かった。オブザーバーとして参加した市川晶久日本商工会議所産業政策第二部副部長は、福島で多くの中小企業が営業損害を被った実体験から個々の実態にあった十分な賠償の仕組みが必要であり、安全対策投資の面からも法的整理が前提となると電力債の信用低下に伴う資金調達コストの上昇を招く懸念があると語った。
 原子力事業者の免責規定を不可抗力よりも更に範囲の狭い非常に稀な場合に限定していることについては、現行の制度で概ね良いとの意見が大半だった。崎田裕子持続可能な社会をつくる元気ネット理事長は、東日本大震災の津波の規模でも免責にならなかったこともふまえ、免責となる場合にはどのように決めていくのか検討すべきと述べた。仮に原子力事業者が免責となるような原子力事故が発生した場合の備えの必要性について、西川一誠福井県知事は、国策民営で進めてきた日本の原子力事業では、国の関与を前提としてバランスのとれた議論が必要だとした。
 次回の第9回専門部会は4月27日に開催する予定で、被害者救済手続きのあり方について議論する。