日立と北大病院、新たな高精度陽子線治療を実現
日立製作所と北海道大学は5月20日、共同開発した陽子線治療システムにおいて、治療室コーンビームCTと強度変調陽子線治療IMPTの2つの新たな高精度陽子線治療の臨床適用を本格的に開始したと発表した。両者は2014年に、呼吸などで位置が変動する肺や肝臓といった体幹部の腫瘍の治療に対応するため、腫瘍位置をリアルタイムでとらえて正確に陽子線を照射する動体追跡技術とスポットスキャニング技術を用いた陽子線治療システムを実現し、北大病院で治療が開始されている。
今回、共同開発した回転ガントリー搭載型コーンビームCTは、治療直前に患者の体内の状態を三次元で正確に撮像することが可能で、従来に比べ陽子線の照射位置精度を高めることができる。これを用いることで、動体追跡技術を適用しない部位の治療においても、高精度の位置決めを行うことができ、陽子線治療制度の向上に資することが期待される。現在までに、治療患者延べ20人に対しコーンビームCTを用いた高精度治療が行われている。
また、強度変調陽子線治療IMPTは、スポットスキャニング陽子線治療の一種で、複数方向から照射する陽子線の強度分布を自在にコントロールすることにより、病巣の形が複雑な場合や、正常組織が隣接している場合にも線量を病巣に集中し、正常組織への線量を低減できる照射法だ。これにより、放射線治療において免れない不確実性としての飛程誤差やセットアップ誤差に対しても、強い線量分布を作る技術を組み合わせ、線量集中性を高く保ちながら動きにも強い分布形成を実現した。IMPTの本格的臨床適用は2015年8月に開始され、現在までに前立腺、肝臓、頭頸部、小児治療に対し適用されている。