規制委、検査制度の実効性向上に向け検討開始
原子力規制委員会の検査制度見直しに関する検討チームが5月30日、初会合を開いた。1月に来日したIAEAの総合的規制評価サービス(IRRS)より、検査の実効性を向上させるよう指摘を受けて、(1)より高い安全水準の実現、(2)事業者による自主的・継続的な安全性の向上――を促すべく、新たな監視・評価制度を検討するもので、半年程度を目途に法令改正の方向性を取りまとめる。更田豊志委員が主担当。
初会合では、JCO臨界事故やデータ改ざん問題などを機に改められてきた検査制度の変遷、米国、フランス、英国の検査制度体系について、原子力規制庁が説明し、見直しのポイントを示した。それによると、検査内容と頻度が規定され細切れとなっている現行の検査制度に替わり、事業者の保安活動すべてを対象に、実施頻度・期間を限定せず、規制機関によるフリーアクセスのもとでの包括的な監視・評価制度を新設するとしている。また、保安活動を監視・評価した結果を踏まえ、機動的かつ柔軟な行政上の措置を通じて、事業者に是正措置の実施を求めるなど、適確な制度運用を図る。新たな監視・評価制度の導入により、(1)点検・手入れなどの保全の高度化による信頼性の向上、(2)本質を捉えた保安活動の実践による質の向上、(3)自主的・継続的な安全向上につなげる風土の醸成、(4)良好事例の評価による品質向上の促進――といった効果が期待されている。
次回以降、事業者からの意見聴取などを予定だが、検討チームメンバー間のやり取りでは、旧原子力安全・保安院の「検査の在り方検討会」に係った関村直人氏(東京大学工学系研究科教授)と平野雅司氏(原子力規制庁)とで、安全文化の制度上の扱い方に関して議論があり、更田委員は、その重要性を認識し、今後丁寧に検討していく考えを述べた。