原賠制度専門部会 見直しの論点整理へ議論進める
原子力委員会の原子力損害賠償専門部会が5月31日、開催された。2015年5月に設置された同部会は、関係者からのヒアリングを行った後、同年12月から見直しにかかる検討課題についてテーマごとに検討してきたが、今回の会合でそれが一通り終了し、これまでの議論を踏まえて見直しの方向性・論点の整理に入った。
原子力損害賠償制度の基本的枠組みについては、被害者保護や国民負担、事業環境変化の下での原子力事業者の予見可能性の観点から議論した。伊藤聡子委員は、救済手続きにあたっては一義的に地元の行政に頼るところが多いため、自治体との連携を大切にすることを求めるとともに、原子力発電の維持は国の意向でもあり、事業者だけでなく国も負担すべきだと述べた。もしも電力事業者が原子力発電を止めたいと言った場合は原子力事業から撤退できるのかという辰巳菊子委員からの質問に対しては、オブザーバーの小野田聡電気事業連合会専務理事が、事業者は「3E+S」(安定供給、コスト低減、環境負荷低減、安全性)の重要性を認識しており、現時点で原子力事業を止めるつもりは全くないことを強調した。
原子力損害賠償制度の目的については、法律の制度設計や原子力損害賠償法の目的規定および官民の役割分担に関して意見を交換した。崎田裕子委員は、事故後は一段と規制も厳しくなり、廃炉や人材育成などの取り組むべき課題が山積する中、原子力事業者の気持ちを削がないよう、目的規定についてはじっくりと議論したいと語った。
次回は原子力損害賠償に係る制度のあり方について、議論を進めていく。