学術会議シンポ、廃炉と介護の現場から見たロボット活用の可能性など

2016年6月28日

「フロンティアを目指す、サイエンスとアート」と題し、ロボット、人工知能、宇宙資源開発他、時宜を得たテーマについて学際的に議論するシンポジウムが6月27、28日、日本学術会議の本部講堂(東京・港区)で開催された。
 その中で、ロボットをテーマとするセッションでは、福島第一原子力発電所の廃炉と介護の現場から見たロボット活用を巡る現状と課題について、それぞれ淺間一氏(東京大学工学系研究科教授)と入江徹氏(オリックス・リビング企画部広報課長)が発言し、ロボットを開発する側が現場のニーズを把握し、互いにコミュニケーションを取り合う必要性が示されるなどした。
 国際廃炉研究開発機構(IRID)の技術委員を務めている淺間氏は、福島第一事故発生以降、これまで、プラントの安定化、がれき撤去、格納容器内調査など、各段階でのニーズに応じ人が立ち入れない所でロボットが活躍してきた経緯を紹介した上で、廃炉の中長期ロードマップで掲げられている「2021年内に初号機の燃料デブリ取り出し開始」については、「かなり難しい」との見解を示した。
 また、入江氏は、要介護者が気兼ねしないことを、ロボット活用の最大のメリットとしてあげ、排泄では特にロボットが必要となると述べる一方、「コミュニケーションをとるのは人」として、介護現場にロボットを導入する上で重要なのは、「人がすることとロボットがすることを切り分けること」などと強調した。
 淺間氏は、今後、老朽インフラ施設の維持・管理などの分野で、ロボットが活躍することに期待を寄せ、実証試験施設の整備、標準化の確立とともに、人材育成やビジネスチャンス創出の重要性を訴えた。会場内から、二足歩行ロボットの実現可能性について質問があったのに対し、淺間氏は、「ロボティクスではまだ夢の段階」と課題意識を示したのに対し、人と一緒に体操するロボットを例に「いかにもロボットらしいロボットしか取り上げない」と、マスコミでの扱われ方を述べた入江氏は、「必要性を感じない」として、介護現場のニーズが一般によく知られていない状況を示唆した。