経産省、長期的な地球温暖化対策について検討開始

2016年7月5日

ONDANKA 2030年以降の長期的な地球温暖化対策について検討する経済産業省の有識者会合が7月5日、始動した。2015年末のCOP21で採択されたパリ協定で、各国には今世紀中頃を見据えた「長期低排出発展戦略」を2020年までに作成することが求められており、同会合では、経済成長と両立する持続可能な地球温暖化対策のあり方について検討を行い、年度内にも議論を取りまとめる運び。
 パリ協定を受けこのほど策定された地球温暖化対策計画では、長期目標として「2050年までに80%の温室効果ガス削減を目指す」とされている。長期目標に向けては、温室効果ガス排出量の8~9割を占めるエネルギー起源CO2の削減がカギとなっており、産業界としては、日本経済団体連合会の先導による「低炭素社会実行計画」で、業種ごとに2030年の目標水準を掲げ、自主的取組が推進されるなどとしている。例えば、電力では、電気事業連合会他による「電気事業低炭素社会協議会」が2月に設立され、各事業者への支援、PDCAサイクルの推進などにより、取組の実効性を高めるよう努めている。
 初会合では、経産省が、関連データとともに、論点として、(1)環境と経済成長の両立、(2)地球規模での温暖化対策、(3)抜本的な温室効果ガス削減技術――を提示し、委員からの意見を求めた。地球温暖化対策計画では、「イノベーションによる解決を最大限に追求する」、「世界全体での削減にも貢献していく」とされているが、日本商工会議所副会頭の大橋忠晴氏は、中国におけるゴミ焼却とセメント生成を一体化したプラントを例に、アジア地域へのイノベーション展開や、地方・中小企業のネットワーク力に期待を寄せた。一方で、経団連副会長の木村康氏は、「2050年までに80%の温室効果ガス削減」の長期目標に対し、経済と環境の両立の観点から、より実効的なものとなるよう慎重な議論を求めるなどした。
 また、宇宙飛行士の山崎直子氏は、地球全体を俯瞰し森林火災によるCO2排出の影響にも言及し、他分野とも連携して長期的ビジョンで考えていく必要を述べた。これに対し、フリーキャスターの伊藤聡子氏は、「短期的に取り組むことと長期的に取り組むことがある」として、日本ではまず、原子力発電所が再稼働できないことによるCO2排出増があることをあげ、「CO2を出さないエネルギー源」について国民が意識を持つ重要性を訴えた。