産総研、がんの骨転移に有効なラジウム223の放射能標準を開発

2016年8月2日

 産業技術総合研究所は、アルファ線を放出し骨に転移したがんに対する新しい放射性医薬品として期待されるラジウム223の放射能標準を開発し、8月1日より本技術に基づく校正を開始した。国家計量標準機関である産総研で校正されたラジウム223により、病院などで用いられる放射能測定装置がより高い精度で管理できるようになり、放射性医薬品のより安全な利用への貢献が期待される。
 産総研は、放射能測定の基準となる標準線源の校正技術を高度化するとともに、トリチウムとアメリシウム241の2つの標準線源による評価を用いた新たな放射能計算手法を導入することで、これまで、崩壊の連鎖により7つの放射性核種が生成・共存し、様々なエネルギーのアルファ線やベータ線を放出するため困難だったラジウム223の放射能を校正する手法を確立した。
 産総研では今後、近年開発が進んでいるアスタチン211、ビスマス212、アクチニウム225、テルビウム149などの放射性医薬品の校正方法についても、研究していくとしている。
 今回の放射能標準の開発に際し、協力に当たった日本アイソトープ協会では、「国内においては塩化ラジウム223を使用した放射性医薬品が本年6月に発売された。病院では放射性医薬品の投与前に放射能を厳密に測定する必要がある」などと、近年ラジウム223に対しより質の高い治療が期待されていることから大いに歓迎している。