原子力委員会の基本的考え方ヒア 文科省・経産省 人材育成の重要性を強調
原子力委員会は8月2日、原子力委員会の「原子力利用に関する基本的考え方」に関し、文部科学省と経済産業省からヒアリングを行った。
文部科学省は、主に原子力人材について、原子力科学技術委員会の原子力人材育成作業部会での中間とりまとめ案を示しながら説明した。原子力分野の人材育成に当たっての基本的な考え方として、福島第一原子力発電所事故後の状況を踏まえての原子力分野が抱える課題への対処、原子力分野の社会的受容性の確保、産官学各機関の役割のもと原子力人材育成ネットワークや学協会の積極的な活動――について挙げた。
課題を踏まえた今後の施策の方向性として、将来必要となる人材の見通し(規模等)の明確化、人材育成に携わる関係機関の連携や分野横断的な取り組み、継続性のある人材育成施策、人材育成で重要な役割を担う施設への支援などを挙げた。
経済産業省は、原子力関係閣僚会議での資料をもとに原子力をとりまく主要課題について説明した。原子力依存度の低減にあたっては円滑な廃炉が必須だとして、2016年度予算に廃炉地域への支援策を計上するなどの対策を行っている。
安全・災害対策については、自主的な安全性向上に向けて2016年3月より電力業界を挙げ各発電所での安全対策の有効性を数値化する手法を開発しているほか、全国知事会の要望に応えて原子力災害対策充実に向けた考え方を3月の原子力閣僚会議で決定しており、また原子力委員会では原子力賠償制度の見直しを検討している。
使用済み燃料に関しては、5月に再処理等拠出金法が成立し、16年度予算に貯蔵能力および乾式貯蔵に着目した交付金を計上して、2016年中に高レベル放射性廃棄物最終処分場の科学的有望地を提示する。
福島の復興にあたっては、首相が3月に公表した福島新エネ社会構想の実現会議が発足し、廃炉・汚染水対策に関しては、原子力規制委員会が陸側遮水壁の連結方針について概ね了承している。また、国内における技術・人材の維持にあたり、日本の原子力発電サプライチェーンの厚みが産業競争力につながっていることを強調した。
岡芳明原子力委員長からは、世界に向けて「ダントツ」の研究計画の仕組みを日本が考え、共同利用などの連携を進めていくことが大事だとした。また、国民の視点から国民負担や長期的ベネフィットについての説明を十分に行い、科学的根拠に基づいたデータやレビューを提供していかなければならないとの考えを示した。