原賠制度専門部会 さらなる議論に向け論点整理

2016年8月24日

DSCF6734 原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会は8月23日、さらに議論が必要な論点などについて整理した。
 被害者保護については、原子力損害と認められる損害はすべて填補されるための制度設計が必要であり、迅速性と適切性を備えた制度および手続きのあり方を検討すべきとした。こうした前提の上で、国民負担と原子力事業者の予見可能性のそれぞれを踏まえつつ議論を進めるとした。また現行の原賠制度では、損害賠償措置による賠償措置額が最大1,200億円である一方、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の相互扶助スキームでこれまでに6兆円程度が交付されており、重大事故への備えとしての損害賠償措置の役割に留意した上で、賠償措置額を引き上げていくことについて検討するとしている。
 原子力事業者の無過失責任や責任集中については現行どおりが適当であるとされたが、事故を起こした事業者の責任を有限とするか無限とするかについては、委員の間で意見が分かれている。又吉由香モルガン・スタンレーMUFG証券エグゼクティブディレクターは、責任限度額が数十兆円という高いところに設定された有限責任では実質的に無限責任と変わらず、無限責任でも国が保険等で所定の賠償額を負担するのであれば事業者の負担を部分的に有限化することとなるとして、二項対立から脱却して実質的な負担論へとシフトすることを促した。高橋滋一橋大学大学院法学研究科教授は、事業者規模も多数で事故の性格も多様であるため、事故を想定するにしても変数が多大となることが危惧され、様々な事象に対応するようなフレキシブルな制度設計を用意することが重要だとした。
 次回会合は9月8日に開催し、被害者救済手続きのあり方について、時効中断や和解の仲介の尊重など被害者の負担軽減等を図るために必要な和解の仲介措置について、検討を進めていく。