原子力委原賠制度専門部会 被害者救済手続きに関し和解の仲介尊重や消滅時効等で議論

2016年9月8日

dscf6773 原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会は9月8日、原賠制度見直しに係る個別の論点についての検討に着手し、今回は被害者救済手続きに関して議論を行った。
 現行の原賠法には損害賠償の実施について特段の規定はないため、損害賠償の実施体制や手続き等は原子力事業者の自主的な対応に任されており、体制整備等の重要性が指摘されている。議論にあたっては、金融、公害、建設、スポーツなど他の裁判外紛争解決手続き(ADR)例も参照した。原子力事業者による和解の仲介の尊重のあり方について、法律上や契約上の義務化、原子力事業者による事前の表明などの方法が挙げられたが、委員は概ね、損害賠償の実施に係る方針等の事前確認(国への届け出)による紛争解決手続きの実効性確保が妥当であるとの意見だった。損害賠償請求権に関しては、20年の除斥期間について後発性の損害の場合は損害の発生時を起算点とする裁判所の判断が定着してきており、現行どおり原賠法で消滅時効等の特例を一律には設けずに、民法の規定を適用することが適当であるとのことでほぼ一致した。
 オブザーバーの馬場利彦全国農業協同組合中央会参事や若林満全国漁業協同組合連合会漁政部部長からは、今もまだ被害者救済が収束していない現場からの意見として、国が前面に立ち、迅速で適切に損害補償を進めていくことの重要性を強調した。また、小野田聡電気事業連合会専務理事からは、電気事業者は原子力事故を起こさないために規制の枠を超え自主的な安全対策を行っているが、万が一の事故で発生する災害や損害賠償の規模は千差万別であることから、実際の現場では柔軟な対応が求められることが考えられるとし、このような点をふまえつつ事前の実効性を確認しながら制度について考えてもらえればとコメントした。