BNCTの実用化に向けシンポ開催、病院に設置できる加速器システムへ
革新的ながん治療法として期待されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の実用化・普及、海外展開について考えるシンポジウムが9月14日、都内で開催された。
BNCTは、ホウ素化合物を体内に注入しがん細胞に集め中性子を照射し、核反応で発生するアルファ線とリチウム粒子でがん細胞を選択的に破壊し治療するもので、正常細胞への影響を抑えられるのが特徴だ。これまで、安定した中性子源となる研究炉を中心に研究実績が積まれてきたが、病院設置には設備的に規模が大きく安全規制も厳しいことなどから、原子炉BNCTの普及は難しく、臨床実績のあるところでは、日本原子力研究開発機構の「JRR-4」が2013年に廃止を決定したほか、京都大学の「KUR」も原子力規制委員会による新規制基準審査への対応のため停止している。そのような状況下、病院でも治療できる小型装置として、加速器中性子照射システムに期待が寄せられており、サイクロトロンを用いた治験を進めている京都大学原子炉実験所、大阪府、熊取町などが中心となって「BNCT推進協議会」がこの7月に発足し、主に関西圏におけるBNCTの普及・高度化に向けた取組が本格化したところだ。
今回のシンポジウムでは、関西での医療拠点となる関西BNCT医療センターの着工に合わせ、BNCTの治験に携わる医療機関、開発に取り組む企業らにより、先進医療としての確立を目指しディスカッションを行うなどした。その中で、関西BNCT医療センターの整備計画については、センター長の黒岩敏彦氏より、2020年8月の治療開始に向けて大阪医科大学(大阪府高槻市)内に建設工事を進めていることが報告された。また、2016年1月より治験を開始した南東北BNCTセンターについてセンター長の髙井良尋氏が、開発に関わった企業として住友重機械工業の治験統括責任者の佐藤岳実氏が、それぞれ原子炉BNCTに替わる病院設置型の加速器BNCTへの取組状況を説明するなどした。さらにディスカッションでは、産学官の連携や人材育成の重要性などがあげられた。