高速炉開発方針について官民で検討へ、「もんじゅ」も抜本的に見直し
政府の原子力関係閣僚会議が9月21日に開かれ、「今後の高速炉開発の進め方」として、核燃料サイクルを推進し、高速炉の研究開発にも取り組んでいく方針を堅持するとともに、経済産業相を中心に、文部科学相、日本原子力研究開発機構、電気事業者、原子炉メーカーの参画する「高速炉開発会議」(仮称)を設置し、今後の開発方針について年内の策定を目指し検討を行うこととした。高速増殖原型炉「もんじゅ」については、廃炉を含め抜本的な見直しを行うこととし、その取扱いに関する政府としての方針を、高速炉開発の方針と併せて示すとしている。
閣僚会議では、核燃料サイクルの仕組み、エネルギー基本計画での位置付けについて、世耕弘成経産相が説明した。エネルギー基本計画では、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の観点から、使用済み燃料を再処理し、ウラン・プルトニウムを分離・抽出してMOX燃料として再利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としている。「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則のもと、MOX燃料を既存の原子力発電所で燃やす「軽水炉サイクル」(プルサーマル)を推進し、国際協力により高速炉の研究開発に取り組み、将来的には、廃棄物の減容・有害度低減の効果がより高い「高速炉サイクル」を目指す姿として掲げている。
「高速炉開発会議」が検討する開発方針の主な内容としては、実証炉の開発目標・具体的な道筋、「もんじゅ」の知見回収、高速実験炉「常陽」の活用、国際協力強化、人材育成対策などがあげられている。実証炉・実用炉の開発に向けては、東日本大震災以前、産学官連携による「高速増殖炉サイクル実用化研究開発」(FaCTプロジェクト)が、2050年頃の実用化を見据え進められていた。原子力機構の「常陽」は現在、原子力規制委員会への新規制基準適合性審査が年内申請に向けて準備中となっている。国際協力では、フランスが2030年頃の初臨界を目指し開発する実証炉「ASTRID」(60万kW)の基本設計及び研究開発について協力を行うことが政府間で合意に至っている。2015年秋の安倍首相とヴァルス仏首相との会談で発出された原子力分野のファクトシートでは、「ASTRID」協力を始め、高速炉に関する日仏間協力について、「もんじゅ」や「常陽」の活用への可能性に道を開く主要なパートナーシップなどとして、さらに強化するものとされている。
「もんじゅ」を巡っては、相次ぐ保守管理不備を重くとらえ、規制委員会より2013年5月に運転再開準備の停止を含む保安措置命令が発出され、2015年11月には文科相に対し、(1)原子力機構に代わる運営主体の特定、(2)それが困難であれば「もんじゅ」のあり方の抜本的見直し――を行うよう勧告がなされた。規制委からの勧告への回答は「概ね半年を目途」とされており、文科省の有識者検討会では、「もんじゅ」運営主体が具備すべき要件を整理した報告書を5月に取りまとめたところだが、文科省の担当官によると、「高速炉開発会議」による開発方針が決定してから回答することとなるとしている。