東芝と量研機構、金属マーカーを埋め込まない重粒子線がん治療技術開発

2016年9月28日

 東芝と量子科学技術研究開発機構は9月26日、重粒子線がん治療装置向けの腫瘍追跡技術を開発したと発表した。コンピューターによる学習機能を用いた画像認識を利用することで、体内に金属のマーカーを埋め込むことなく、呼吸に伴って動く腫瘍を含む領域を特定し、誤差1mm程度の精度で腫瘍の位置を追跡するもので、東芝の画像処理技術と量研機構のがん治療実績により開発に至った。
 肺がんなど、呼吸に伴って動くがんを重粒子線などの放射線で治療する場合、呼吸の動きに合わせて患部に治療ビームを照射し、正常組織への影響を避ける必要がある。呼吸に同期した照射を行うには、X線透視装置を用いて患部付近に埋め込んだマーカーを目印に腫瘍を捉える方法と、マーカーを用いずに、患者の体表面の動きをセンサーで監視して呼気時にビームを照射する方法があるが、マーカーの埋め込みは患者への負担が大きい難点がある。
 本技術では、まず治療前に撮影した患者の鮮明な4D-CT画像を基に、デジタル再構成シミュレーション画像を作成し、そこから腫瘍のある領域とない領域を分け、それぞれの形態的特徴をコンピューターに学習させる。治療時には、コンピューターが実際のX線透視画像に対して、学習で得られた形態的特徴をもとに、どの領域が腫瘍かを判断することで、金属マーカーを埋め込まなくても、誤差1mm程度で腫瘍の位置を特定することができる。東芝では本技術を搭載したシステムについて、2017年度の製品化を目指している。