原子力機構報告会、将来を担う技術と人材についてディスカッション

2016年11月10日

jaeahoukokukai 日本原子力研究開発機構は11月8日、東京・千代田区の有楽町朝日ホールで報告会を開催し、最近の研究開発成果を発表するとともに、「わが国の将来を担う原子力技術と人材」をテーマにパネルディスカッションを行った。
 パネルディスカッションでは、モデレーターとして登壇した東京大学工学系研究科教授の山口彰氏が、2020年、30年、50年頃を見据えた原子力技術と人材育成のビジョンを、それぞれ「軽水炉を利用する当面の技術と人材」、「福島第一廃炉を担う次世代の技術と人材」、「次世代システムの実現に向けての技術と人材」とイメージして議論に先鞭を付けた。
 近年の原子力関連を専攻する学生数、企業における原子力部門の採用状況などの推移について、原産協会人材育成部の木藤啓子氏が紹介、福島第一原子力発電所事故前後の増減傾向について述べ、また、高等教育に携わる立場から、東北大学工学研究科教授の長谷川晃氏は学生たちに原子力分野の魅力を知ってもらう必要性を訴えた。これに対し、東京電力ホールディングス執行役員の松本純氏は、福島第一原子力発電所の廃炉に関し、廃棄物の物量や現場の放射能レベルなど、通常炉と異なる特殊性をあげた上で、完遂には「先端技術を多く適用しなければならない。技術的にチャレンジングな分野といえる」と述べ、ニーズや魅力・可能性を伝えていく必要性を強調した。
 また、原子力機構理事の三浦幸俊氏が、報告会で研究成果として発表された除染廃棄物の減容化につながる粘土鉱物へのセシウム吸脱着が異分野コラボレーションにより成し遂げられたとして、「研究する面白さ」を訴えかけると、文部科学省政策評価審議官の中川健朗氏は、科学技術・イノベーション行政に長く関わってきた経験から、「課題を共有して一緒に汗を流す」産学官連携・異分野融合の重要性を強調するなどした。
 この他、長谷川氏は、日本原燃との協力で実施している社会人教育プログラムについて紹介し、将来に向けた核燃料サイクル技術・人材の維持・確保に、木藤氏は、産学官の連携協力プラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」の活動に触れ、国際的視野を持った人材が育つことに期待を寄せるなどした。