ローム他、シリコンカーバイドを活用しBNCTの小型化に向け共同研究開発
ローム、京都府、京都府立医科大学、福島SiC応用技研の4者は11月22日、SiC(シリコンカーバイド)を活用したホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に関わる共同研究開発で基本合意したと発表した。
BNCTは、ホウ素薬剤を取り込ませた病巣に中性子を照射し放出されるアルファ線でがん細胞を破壊するもので、正常細胞への影響を抑えることのできる革新的ながん治療法だ。このほど研究開発を実施することとなったSiC-BNCTは、ロームの最先端半導体技術であるSiCを活用するほか、中性子源として、既に日本原子力研究開発機構などで実績のある原子炉に替わり、加速器を用いることで、従来型より大幅な小型化が図られ、病院内設置の制約が解消し医療用具としての普及が期待される。また、装置の小型化とともに、小型加速器中性子源を患者周囲に10本配置することで多門照射が可能となり、治療対象を体表面から深さ25cm程度にまで拡大できるほか、ホウ素薬剤の開発を合わせて行い、さらに安全な治療法として確立するものとしている。
今回の合意内容は、京都府立医科大学と福島SiC応用技研によるSiC-BNCT機器の開発に加えて、ロームが、SiC-BNCT機器を備えがん治療を行う「ローム記念BNCT研究センター」(仮称、京都府立医科大学内)を建設し、京都府に寄付することも盛り込まれている。
「ローム記念BNCT研究センター」が完成すると、日立製作所により同じく京都府立医科大学内「永守記念最先端がん治療研究センター」に整備が進められている陽子線がん治療システムと合わせ、2つの最先端のがん治療が同一敷地内で一体的に行えるようになる。
BNCTによるがん治療の臨床実績については、既に廃止が決定した東海村の原子力機構研究炉「JRR-4」が知られているが、関西圏におけるBNCTの普及に向けては、7月に京都大学、大阪府、熊取町他が中心となって「BNCT推進協議会」が発足、医療拠点として「関西BNCT医療センター」(大阪医科大学内)が着工したほか、都内でもこうした取組の啓発を図るシンポジウムが開かれるなど、動きが活発化している。