原子力委員会 基本的考え方 国内外の環境変化ふまえ原子力発電の特性活かせる措置を
原子力委員会は3月23日、「原子力利用に関する基本的考え方」に盛り込むべき事項について委員間で意見を交換した。今回は、地球温暖化問題や国民生活・経済への影響を踏まえた原子力エネルギー利用の在り方を中心に議論した。
同日会合で示された「重点的取り組みとその方向性」では、(1)国内外の原子力利用をめぐる環境変化への適合、(2)国民生活・経済への影響と地球温暖化問題を踏まえた総合的判断に基づく対応、(3)着実な軽水炉利用に向けた取り組み、(4)核燃料サイクルの取り組み――の4項目について考え方を整理している。
その中で、まず、国内電力市場の競争環境の出現、中国・インドといった原子力発電新興国の台頭など、昨今の原子力発電を取り巻く環境変化について述べた上、国に対して、「エネルギーコストの増加を最小限に抑える形で、原子力発電の特性を活かせるよう、こうした課題の解決に向けた措置の検討が必要」と提言した。
また、地球温暖化問題や国民生活・経済への対応に関して、「2050年までに80%の温室効果ガス削減」は、現状の取り組みの延長線上では達成困難との見通しを示すなどした上で、原子力発電は「低炭素かつ運転コストが低廉なベースロード電源」であるとして、「果たし得る役割や位置付けを明らかにし、必要な対策を検討すべき」とも指摘している。
その上で、今後も長期利用が見込まれる軽水炉運転については、使用済み燃料中間貯蔵の能力拡大に向けた取り組み強化が必要と述べ、再処理を始めとする核燃料サイクル事業については、「利用目的のないプルトニウムは持たない」という原則を改めて明記し、平和利用、核不拡散に貢献し、国際的な理解を得ながら進めるという日本の立場を示している。
この他、放射線・放射性同位元素の利用の展開については、今後も既存基盤の戦略的な有効利用を進めるとともに、量子ビームを含め放射線およびラジオアイソトープをさらに活用していくための基盤整備を行い、放射線の健康影響や環境影響の研究にも注力していくことが大切だとした。また、放射線及びラジオアイソトープ利用が国民生活の向上に貢献しているという認識を広めること、これらの取り組みによってイノベーションが創出されることを期待するとした。
「基本的考え方」の各論についての議論は今回で終了となり、今後は全体の取りまとめに入る運びだ。