【第50回原産年次大会】天野IAEA事務局長、会見で人材確保は「世界で大きな問題」と強調
IAEA事務局長の天野之弥氏は、11日の開会セッションでの講演後、記者会見を行った。
同セッションでは、日本の核燃料サイクル政策に関する発表もあったが、会見では、まず、六ヶ所再処理工場の2018年度上期しゅん工が見込まれる中、「日本が約48トンのプルトニウムを保有している」ことについて質問を受けた。これに対し、天野氏は、各国の原子力平和利用のあり方は「主権国家で決めること」と、IAEAとしての立場を明確にした上で、長らく行ってきた保障措置や核物質防護の他、日本については、「国際核物質防護諮問サービス」(IPPAS)ミッションを派遣し、「規制組織の強化を確認した」などと、良好な見解を示していることを述べた。因みに、規制委員会では1月に、2018年秋を目途にIPPASのフォローアップ・ミッションを受け入れることを決めている。
福島第一原子力発電所事故を踏まえて要請されたIAEAによるミッションについては、2016年1月に派遣した「総合規制評価サービス」(IRRS)に関する質問もあり、天野氏は、「日本からの要請があれば、常にフォローアップ・ミッションを送る用意がある」と応えた。
さらに、高レベル放射性廃棄物の処分に関する質問に対し、天野氏は、社会的な受入れが難しい現状を認識しつつ、処分事業が進展しているフィンランドやスウェーデンなどの施設における技術的実証や、廃棄物の有害度を低減する研究開発も重要となることを強調した。
また、原子力分野の人材確保について尋ねられると、天野氏は、各国とも中高年層が現場を離れつつある現状に触れ、「人材確保は日本だけでなく世界で大きな問題」と強調し、若手を喚起するIAEAの取組「ニュークリア・オリンピアード」が専門家の育成に向け効果を見せていることを紹介した。
開会セッションの中でも述べていた福島第一原子力発電所の廃炉について、天野氏は改めて、「非常に困難。日本だけでなく国際的な協力を得て行うべき」としたほか、廃炉は原子力発電を行う国が必ず直面する問題であることから、ここで得られる技術は「将来の各国における安全な廃炉に貢献する」として、IAEAでも引き続き支援していく考えを述べた。
北朝鮮核問題に関する質問については、NPT撤退、検査官の国外退去など、同国を巡る現状について「非常に深刻、安全保障上の脅威」と憂慮した上で、IAEAとして継続的に各施設の監視を行い、検査官を再度派遣できるよう体制整備を図りつつあることを述べた。