今夏電力も全国的に予備率3%確保の見通し、原子力再稼働するも火力依存度は依然高水準
総合資源エネルギー調査会は4月21日、今夏の電力需給見通しを取りまとめた。全エリアにおいて、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3%以上を確保できる見通しで、昨夏、昨冬に引き続き政府として特別の節電要請は実施しないとしている。今後、官邸レベルの検討会合を経て、最終的な夏の電力需給対策として決定される運び。
夏季(7~9月)と冬季(12~3月)の電力需給見通しについて、昨冬から、同調査会では、電力小売全面自由化などの状況を踏まえ、大手電力会社に新規参入者も加えて、全国10エリア(北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄)を対象とし、エリア間の取引も考慮した評価結果を、「電力広域的運営推進機関」より報告を受け審議することとなった。
今夏の最大電力需要量については、10年に1回程度の猛暑を考慮して厳しめに算定した。一方で、供給力としては、各電源とも、「確実に見込めることを前提に十分精査しつつ、最大限の供給力を見込む」考えから、原子力では、既に再稼働している2エリアの255万kW分(伊方3号機、川内1、2号機の合計出力よりやや少なめ)が8月に計上されている。火力発電への依存度は、原子力発電所の再稼働が進展しつつあり、やや改善傾向が見られるものの、依然高水準にあるほか、今夏も高経年火力34基が稼働する見込みで、計画外停止のリスクが高い状況だ。
また、原子力発電所の停止に伴い電力9社合計の燃料費は、2016年度実績(推計)で2010年度比約1.3兆円増(国民1人当たり約1万円の負担増)にも上っており、近年回復傾向にあるものの国富流出の拡大要因となっている。2016年度までの累積燃料費増加額は、約15.5兆円(同約12万円の負担増)にも達すると試算されている。さらに、化石燃料の消費増は、電気料金の上昇や温室効果ガス排出量の増加にもつながっており、電力供給構造における大きな課題となっている。
こうした課題を踏まえつつ、資源エネルギー庁では、今夏、全国的に節電要請を実施しないが、(1)電気事業者に対して発電設備等の保守・保全を強化することを要請、(2)広域機関に対して必要に応じて電力融通等の対応を速やかに講じることを要請、(3)電気事業者に対してディマンド・リスポンス等の需要面での取組の促進を要請、(4)産業界や一般消費者と一体となった省エネ・キャンペーン等を実施――といった需給ひっ迫への備えを講じるとしている。