JANSI「アニュアル・カンファレンス」開催、現場のモチベーション維持などが議論に

2017年5月1日

 原子力安全推進協会(JANSI)は4月27日、都内のホールで、1年間の活動実績を報告し意見交換を行う「アニュアル・カンファレンス 2017」を開催した。
 今回のカンファレンスでは、事業者による原子力の安全性向上への取組について、2つのセッションを設け、消費者やジャーナリストの視点も含めパネル討論が行われた。資源エネルギー庁の安全性向上に関するワーキンググループの座長を務めている山口彰氏(東京大学工学系研究科教授)の進行による最初のセッションでは、中部電力の勝野哲社長と北陸電力の金井豊社長が、それぞれ自主的安全性向上の取組状況を説明し、パネリストとして登壇したジャーナリストの崎田裕子氏からは、社会とのコミュニケーションの重要性が指摘されるなどした。
 また、後半のセッションでは、中部電力、関西電力、四国電力から、現場における安全性向上の取組について説明があり、特に、原子力発電所の長期停止が続く中で、協力会社も含めた発電所員らのモチベーション維持・向上の重要性が強調された。その中で、関西電力大飯発電所長の吉田裕彦氏は、「発電所で働く誇りを持つ」、「地域の方々に『発電所があってよかった』と思っていただく」と、常々発電所員らに言い聞かせているとした上で、対話活動、電光掲示板を利用した情報発信、食堂・トイレの改善、親睦イベント開催などを通じ、「マイプラント意識」の醸成に努めていることを紹介した。
 これを受けて、読売新聞論説委員の井川陽次郎氏は、原子力関連の報道・社説などを振り返りながら「再稼働を急ぐより、技術の維持をどうするか、真剣に考えるべき」と、一方で、福井工業大学工学部教授の来馬克美氏は、「再稼働することで国民全体の信頼につながる。また、1つでも2つでも動かさなければ人は育たない」と、それぞれ警鐘を鳴らした。消費生活コンサルタントの市川まりこ氏からは、「特に女性は不安情報に弱い」、「メディアの不適切な報道が不安を助長」などと、食品のリスクコミュニケーション活動を踏まえた見方が示され、「信頼は、積み上げるのは大変だが、わずかなことで崩れてしまう」として、安全性が確保されても、社会が受入れていく難しさを訴えかけた。
 後半セッションの進行役を務めたJANSI専務理事の山﨑広美氏は、再稼働に向け新規制基準をクリアするだけでなく、現場の技術力向上、モチベーション維持、対話活動など、事業者による様々な努力が図られていることを認めつつ、「地域の方々に日々の取組姿勢をしっかり見ていただくことが重要」と述べ締めくくった。