エネ研が2018年度の需給見通しを発表、「原子力再稼働のペースは3Eの改善を左右」
日本エネルギー経済研究所は7月24日、2018年度のエネルギー需給見通しを発表した。それによると、2018年度、日本経済は、「2003~2007年度以来となる4年連続1%超の成長」と、堅調な拡大を維持するものの、省エネルギーの継続に加え、経済活動の伸びが前年度よりも緩やかとなることなどから、一次エネルギー消費は0.6%減(前年度は0.1%減)と、減少が強まるものと分析。エネルギー起源のCO2排出量は、原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーの伸長も重なり、5年連続で前年より減少する(2017年度は2.0%減で11億1,300万トン、2018年度は1.6%減で10億9,600万トン)としている。
原子力発電については、これまで5基のプラント(関西電力高浜3、4号機、四国電力伊方3号機、九州電力川内1、2号機)が新規制基準をクリアし再稼働しているが、2018年度末までに累計10基が再稼働した場合、原子力稼働ゼロの場合と比べ、化石燃料輸入総額は5,000億円減少、実質GDPは5,000億円拡大、CO2排出量は2.7%減少するとの分析結果を示した。資源エネルギー庁が4月にまとめた電力需給検証報告書によると、原子力発電の停止分の発電電力量を火力発電のたき増しにより代替しているものとすると、東日本大震災前(2008~10年度)に比べ、2016年度の燃料費は約1.3兆円の増加(国民一人当たり約1万円の負担増)と推計している。
また、2018年度末までで、原子力発電所の再稼働が累計10基の「基準シナリオ」に加え、新たな再稼働がない「低位ケース」、再稼働が累計17基の「高位ケース」も想定した評価を行っており、「低位ケース」では、経済効率性、エネルギー安定供給、環境適合のいずれの効果についても、「基準シナリオ」の概ね半分にとどまるとしている。一方、「高位ケース」では、原子力稼働ゼロの場合と比べ、化石燃料輸入額は7,000億円減少、実質GDPは8,000億円拡大、CO2排出量は4.0%減少などと、経済活動や環境保全に与える効果が「基準シナリオ」を凌いでいることから、「原子力再稼働のペースは3E(経済、エネルギー安定供給、環境)の改善を左右する」と述べている。
現在、原子力発電プラントは、運転中の5基の他、計7基のプラントが新規制基準適合性に係わる審査をクリアし、再稼働に向け準備を進めている。