日商・東商、エネルギー基本計画見直しで意見公表
日本商工会議所と東京商工会議所は11月16日、政府が今夏より検討を開始したエネルギー基本計画見直しに関する意見を公表した。電力コストの上昇が中小企業の経営や地域経済に及ぼす悪影響を危惧し、原子力発電所の早期運転再開に向けた取組の強化、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の検証・見直しなどを求めるとともに、現行のエネルギーミックス(2030年度の電源構成で、原子力22~20%、再エネ22~24%、化石燃料56%)が着実に実現するよう要望している。
日商・東商がまとめた意見では、335社の企業を対象に実施した東日本大震災直後の2011年4月以降と、2015年9月以降のそれぞれ1年間での電力コスト比較に関する調査結果から、1社当たりの平均で、電力消費量は3.6%減少しているものの、電力コスト単価は燃料価格の下落にもかかわらず11.8%上昇していることを示した。さらに、2017年8月の調査で、震災後の電力料金の上昇が足元の経営に「悪影響がある、懸念がある」と回答した企業が62.7%を占め、「現在の状況が継続した場合は、節電などのコスト削減や省エネ設備の導入に加え、人件費の削減もせざるをえない」という声もあったとしている。
エネルギーミックスの実現に向けた具体的意見としては、(1)重要なベースロード電源である原子力の維持、(2)再生可能エネルギーの普及支援、(3)エネルギーシステム改革の普及促進、(4)エネルギー・環境問題に関する人材育成、(5)イノベーション促進、(6)省エネの取組に関する支援――などを強化すべきとしている。
原子力については、「資源輸入が一時的に途絶えてもエネルギー供給に支障が出ない盤石な安定供給や、温室効果ガス排出削減に向けた取組の実効性の向上」に寄与するものとして、その役割を再確認し、長期的視点から、建設中のプラントの運転開始を目指すとともに、新増設やリプレースの議論を政府主導で行うよう求めている。
また、エネルギー・環境問題に関する人材育成に関しては、原産協会が毎年開催する学生向け就職活動イベント「原子力産業セミナー」の参加学生数の横ばい傾向について触れ、「このままでは、原子力技術の衰退も招き、最優先すべき安全確保にも支障が生じる」との懸念を示した。その上で、(1)高等教育における若手人材への魅力発信、(2)カリキュラム開発や教職員への普及啓発などによる学校教育の充実・強化、(3)原子力産業界が一丸となった原子力安全性向上の取組――を展開することが重要だとしている。
日商が2017年8月に実施した調査では、今後も電気料金が高く推移した場合の対応として、「省エネ性能の高い設備の導入・更新」をあげた企業が40%を占めたが、これに関連して、全国各地への省エネ支援窓口の設置促進や、中小企業へのハード・ソフト両面による支援拡充などを、新たなエネルギー基本計画に明記すべきとしている。