「原子力国民会議」が全国大会開催、声明文「原子力なくしてこの国は立ち行かぬ」を採択
原子力・エネルギー問題に関する地域理解活動、政策提言などを行う「原子力国民会議」(共同代表=有馬朗人・元文部大臣、葛西敬之・JR東海名誉会長)は11月22日、都内で全国大会を開催し、「原子力なくしてこの国は立ち行かぬ」と題する声明文を採択した。
声明文はまず、首都圏直下型地震に伴う都市部の火力発電設備の損傷、政情不安な中東地域の石油に依存したわが国のエネルギー事情などを危惧し、「原子力発電こそ緊急事態時における国民の命と生活を守る」と述べている。また、震災後、停止した原子力発電プラントの代替として焚き増しした火力発電のため、多額の化石燃料費が投入され、電気料金の値上がりに伴い、電力多消費型産業が疲弊したことなどを振り返り、「原子力発電を推進しなければ、わが国の将来の反映は困難」と訴えている。さらに、声明文は、化石燃料に依存する限り、温室効果ガスの排出削減には限界があり、対策には膨大な経費を要することなどから、発電時にCO2を排出しない原子力の将来的役割として、「温暖化防止対策の切り札的存在」、「地球温暖化の防波堤」と、その必要性を強調した。
全国大会には、政府、自由民主党で多くの要職を歴任した衆議院議員の細田博之氏が来賓として訪れ挨拶に立った。同氏はまず、「現在地球上の人類は75億人、毎年2億人ずつ増えている」、「世界中の人々が化石燃料に頼ることは到底不可能」などと、将来世代のエネルギー確保や環境保全に警鐘を鳴らした上で、「原子力を止めることは人類の英知に反する」と強調し、国民の先導となって世論に正しい情報を発信していくよう国民会議の活動にエールを送った。
また、立地地域からは、玄海町長の岸本英雄氏、高浜町長の野瀬豊氏、大洗町長の小谷隆亮氏が登壇し、原子力発電所が地域に与える経済効果、原子力に対する国民世論の現状、研究施設と観光資源が共存してきた歴史について、それぞれ、経験や考え方を述べた。町役場職員の頃から約60年にわたり町政に関わってきた小谷氏は、昭和30年代の日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)誘致に始まり、材料試験炉「JMTR」、高速実験炉「常陽」、高温工学試験研究炉「HTTR」と、3つの研究炉を立地した経緯を振り返り、「原子力研究開発を支える町」として発展してきた歴史を紹介した。また、観光地としての大洗町の近況について、同氏は、アニメ「ガールズ&パンツァー」の聖地としても人気を集めているほか、19日に開かれた「あんこう祭」には13万人もの来場者があったことなどを披露した。
この他、大会では、気候変動問題解決のためのイノベーションについて話し合う「ICEF年次総会」(10月4、5日、東京)のセッション座長を務めた慶応義塾大学大学院特任教授の遠藤典子氏が特別講演を行った。同氏は、ICEFでの議論から、AI技術などの進展に伴い情報処理量が膨大に増加しつつあることに触れ、「こうした新たなイノベーションにより、ますますエネルギーが消費されるようになる」などと危惧した。