福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(1)

 福島第一原子力発電所事故から間もなく7年。廃止措置については、2017年9月に改訂された中長期ロードマップに従い、汚染水対策、1~3号機使用済み燃料の取り出しや燃料デブリの取り出しに向けた準備が着実に進んできた。師走も終わりに近づき、寒風が身に染みる冬晴れの日、現地を訪れた。

3号機使用済み燃料取り出し準備着々と
 12月の中長期ロードマップ月例会見で、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは、2018年の抱負として「3号機の使用済み燃料取り出しを確実にスタートさせること」を第一にあげた。使用済み燃料プールからの燃料取り出しについては、2014年12月に4号機が先行し完了している。2017年は、次に進捗する3号機(=写真上)で、1月に燃料取り出し用カバー設置工事が開始、7月には全8ユニットから構成されるドーム屋根の設置に入り、12月12日までに6ユニットが据え付けられ、かまぼこ状の外形を呈してきた。また、11月には燃料取扱設備の設置工事が行われ、今後、2018年2月に、これを覆い隠すように残りの2ユニットが設置される運びだ。
 クレーン(重量90トン、長さ17.0m、幅8.5m、高さ11.3m)、燃料取扱機(重量74トン、長さ17.0m、幅8.0m、高さ9.3m)、ともに燃料取扱設備の主要な構造物だが、開発に当たった東芝エネルギーシステムズ原子力機械設計部の技術者によると、2017年11月5日の横浜・本牧港出港から、同8日の福島第一構内への搬入に際しては、様々な苦労があったようだ。(参照11月6日既報)まず、海上輸送に伴い海水の影響を受けぬよう社内の専門家から知見を求め、これまでにない念入りな梱包を行ったほか、現地への搬入も高線量下で重量物を吊り込むという特殊性から、遠隔操作でクローラークレーンを2台用いて行ったと話している。

東芝エネルギーシステムズ原子力機械システム設計部・東倉一郎氏(左)、同・伊藤悠貴氏(右)、「後戻りせぬよう」、「トラブルが起きぬよう」と続く作業の着実な進展に向け気概を述べる

 燃料取扱設備については出荷前の2015年、約1年間にわたり、燃料取り出し作業の工場訓練が協力企業に対し実施された。使用済み燃料の取り出しに際しては、まず支障となるガレキを除去する必要がある。模擬燃料プールを設置して遠隔操作を行う工場訓練のうち、ガレキ撤去訓練では、特に、吸引の工程で困難を伴ったという。燃料取扱設備の設計を開始した2012年の時点では、「プール内がどういう状況かわからなかった」ため、遠隔操作のマニピュレータの先端に「小ガレキをつかむ」、「ケーブルを切る」など、臨機応変に様々なツールが接続できるよう準備してきたと、開発当初の試行錯誤を振り返る。燃料取扱設備の実機運用に際しては、工場訓練の経験を踏まえ、今後、数か月間の訓練を行う予定だ。
 中長期ロードマップでは、2018年度中頃を目処に、3号機の燃料取り出しを開始するとされている。

廃棄物関連施設敷地造成地を眺望し
 廃止措置の進捗に伴い、廃棄物対策も重要な課題だ。ガレキ・伐採木などについては、現状、構内に点在する一時保管エリアを解消していくため、可能な限り減容する必要がある。構内北側に広がる廃棄物関連施設敷地造成地(=写真下)を俯瞰した。お立ち台からは、右手に、2016年3月に運用開始した「雑固体廃棄物焼却設備」が見える。主に使用済み保護衣などを焼却する。2017年6月に改訂された東京電力の固体廃棄物保管管理計画によると、今後、「雑固体廃棄物焼却設備」に加え、2020年度には「増設雑固体廃棄物焼却設備」、2021年度には不燃物を圧縮切断・破砕する「減容処理設備」などが順次整備されることとなっている。2018年度には、保管のための施設として、コンテナ方式の「汚染土一時保管施設」が設置される計画だ。 (続く

*「福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(2)」はこちらを、「福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(3)」はこちらをご覧下さい。