ユタ大学原子炉研修報告会 安全文化の徹底など学び今後の業務へと活かす

2018年2月5日

 「2017年度米国ユタ大学原子炉研修」の参加報告会が2月2日、原産協会で行われた。同研修は原産協会「向坊隆記念国際人育成事業」の助成により2017年度初めて行われたもので、5名の原子力産業界の技術系若手社会人を派遣。11月6日から10日まで、岡山大学の学生3名やユタ大学およびブリガムヤング大学などの米国人学生らとともに、緊急時対応能力の向上を主たる目的として、原子力発電所の安全文化、過酷事故およびその対応、シミュレータ実習、ユタ大学が所有する出力100kWのTRIGA研究炉の操作などを学んだ。この日は参加者のうち2名が発表を行った。
 関西電力原子力事業本部原子力安全部門安全技術グループの澤野弘幸氏は、講師からの質問に受講者が回答していくことで能動的に講義に参加する仕組みになっており、討論の流れをつかみながら自分の意見を短時間で構築して積極的に発言していく姿勢の大切さを実感したと語った。またテクニカルツアーでは、市街地から約100kmも離れた低レベル放射性廃棄物施設を見学したところ、蒸気発生器などの大型低レベル放射性廃棄物はコストの観点から大気に曝露した状態で保管されており、国土の狭い日本では別の対策を考えないと難しいのではと所感を述べた。さらに、今回の研修を通じて得られた国際的な人的ネットワークも今後の業務に活かしていきたいと意欲を示した。
 MHIニュークリアシステムズ・ソリューションエンジニアリング原子炉制御安全技術部の松本敦史氏は、安全文化醸成のためには、技術面での「ハードスキル」ばかりでなく、個人の仕事の仕方や倫理観に基づく「ソフトスキル」の向上が必要であり、作業前のミーティングや自己点検、STAR(Stop,Think,Act,Review)などの方策が徹底されていることを学んだとして、今後は事前に異変に気付く力などを意識的に鍛えていく必要性を認識したと述べた。またこうしたスキルを備えたオペレータによって過剰に厳しくなりすぎず合理的な安全管理が行われていることや、リスクコミュニケーションなどのプロセスが体系立ってまとめられていることも印象深かった点として挙げた。
 「向坊隆記念国際人育成事業」の運営委員長を務める高橋明男原産協会理事長は、「さらに自己研鑽を重ね、今回のネットワークも活かして、日本の原子力産業に貢献していってほしい」と参加者たちにエールを送った。
参照:(2017年11月28日理事長メッセージ)