福島を知って応援、伝えて応援を広げるために、「アップデイトふくしま」開催
福島第一原子力発電所事故から7年が経過しようとしているなか、国内外において、いまだ根強く存在する福島の現状への様々な誤解や誤情報を正し「アップデイト」する手法などについて考えるシンポジウム「アップデイトふくしま」が2月10日、東京・渋谷区の国連大学で開催された。シンポジウムは、東京大学名誉教授の早野龍五氏をはじめ、2011年の福島第一原子力発電所事故以来、福島に関する情報発信などの理解活動に尽力してきた4人が実行委員となって、環境省と国連大学の共催で行われたもの。実行委員の一人開沼博・立命館大学准教授が進行役を務め、他の委員もパネリストとして登壇し、現状の問題点を指摘し、分析、解決への提案などを行った。
早野氏は、事故直後からツイッターを通じた情報提供に始まり、地元福島の高校生と放射線状況の把握と世界への情報発信などの活動に努めてきたものの、いまだに放射線の遺伝的影響などについて誤解があることを鑑みると、将来的な差別にも通じるのではないかと危惧を示した。さらに、これまで個人への情報提供に注力してきたが、広くすべての人への情報発信の必要性が重要であり、それには国の関与も必要であるとした。
また、東京慈恵会医科大学の越智小枝講師は、事故後、それまで縁のなかった福島県相馬市で医療活動を約4年にわたり続けてきた経験から、「福島は食の面でも恵まれた産地。そういう福島を東京の人も知ることでメリットがある。さらに、福島での経験がこれから国内で起こりうる災害の被害を少なくすることに役立つ」などと、「知って得する福島」を強調した。
カナダ出身ながら、福島に震災前から在住し、「福島大好き」と明言する福島大学のウィリアム・マクマイケル助教は、世界から見るといまだに、「福島は人が住んでいるの?」という誤ったイメージを持っている人がいることを訴え、間違った情報が流されている現状に残念な思いを示した。
そうした状況を懸念し、マクマイケル助教は、世界の大学から学生をこれまで12回にわたり154人招き、福島第一原子力発電所を含む福島を実際に見て、地元の人との交流などを通じ、現状を理解してもらう活動を紹介した。シンポジウムの会場には、同活動に参加しているグラスゴー大学の学生3人も登壇し、福島を訪問する前に抱いていたイメージと実際とは大きく違っていたことを述べた。
「福島の今がどのように伝わっているか」と題する事例編では、ドキュメンタリー番組「ディスカバリーチャンネル」のディレクターによる福島について世界へ発信してきた番組の紹介があった。他にも、2013年以来、福島第一原子力発電所沖で釣った魚の放射線量を測定し情報発信を続けている人や、農業を通じて福島の復興に寄与したいとするトマト生産者が、福島の現状をそれぞれの立場から世界に向けて発信していくことの重要性を強調した。
また、早野氏からは、事故発災時に小学生だった地元高校生たち3人が紹介され、各人が(1)自分たちで放射線量を測り、その取組から得た情報を発信すること、(2)福島が有する魅力を国内外に伝えていくことへの意気込み、さらには、(3)故郷の復興に役立つために将来は福島第一原子力発電所の廃炉作業に関わりたいという希望を表明した。
最後に、実行委員に加え、福島県立福島高校の原尚志教諭、ふたば未来学園高校副校長の南郷市兵氏らが登壇し、シンポジウムを通じて明らかになった状況を踏まえた提言のための総括パネルが行われた。
提言では、開催テーマにも繋がるメッセージとして、「福島で生まれる新たな魅力や価値が福島の外で、そして世界で活用できるものになっていることから、そこにある『新しい社会づくりのヒント』を広く伝えること」「(福島の)若い人の地域の未来を考えての取り組みから得られる知見を福島発のモデルとして発信していく」ことなどがまとめられて終了した。
シンポジウムの様子は、後日「アップデイトふくしま」ホームページならびにフェイスブックで公開される。