エネ調原子力小委、東電原子力安全監視室長クロフツ氏を招き安全性向上につき議論

2018年2月13日

 総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・持続性推進機構理事長)は2月8日、1月に2年半ぶりの再開となってから2回目の会合を開き、同委員会下に置かれた自主的安全性向上ワーキンググループの検討状況について資源エネルギー庁より説明を受けたほか、東京電力の原子力安全監視室長を務めるジョン・クロフツ氏が企業の安全文化醸成などに関するプレゼンテーションを行い議論した。

総合資源エネルギー調査会資料より引用

 資源エネルギー庁は、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準の策定、事業者による安全性向上を支援する組織の設立など、これまでの取組状況を整理した上、2013年に設置された自主的安全性向上ワーキンググループの議論について説明した。同ワーキンググループでは2017年6月に中間整理を行い、原子力に携わるあらゆる関係者が相互に適切なコミュニケーションを図り、効果的に作用し合う関係を築くことで、より高い安全性を実現していくという好循環「継続的な原子力の安全性向上のための自律的システム」を示した。今後は、米国の事例を参考とした新たな枠組み作りなど、産業界におけるさらなる取組強化を検討中だ。
 また、クロフツ氏はまず、「安全は事業者のトップから」と述べ、事業者の幹部から安全の改善を推進しなければ、他の誰も動かないことを強調した。その上で、福島第一原子力発電所事故の当事者として、「事故を決して忘れない」、「昨日より今日、今日より明日の安全レベルを高める」、「比類なき安全を創造し続ける原子力事業者になる」ことの決意表明、事故調査、原子力安全改革プランの策定、外部組織「原子力改革監視委員会」の設置など、これまでの経緯を振り返った。同氏を室長に迎え2013年5月に設置された「原子力安全監視室」は、東京電力取締役会直轄の組織で、事故の総括と原子力安全改革プランにおける経営層への監視・支援強化策として、第三者の立場から、取締役会の原子力安全に関するリスク管理強化を行う役割を持つ。クロフツ氏は、「原子力安全監視室」の特長として、「優秀な人材の集結」、「ライン部門からの独立」、「エンパワーメント」などをあげたが、「監視機能の確立には数年かかる」として、原子力安全文化の醸成はまだ道半ばであることを示唆した。
 これを受け、自主的安全性向上ワーキンググループの座長を務める山口彰委員(東京大学大学院工学系研究科教授)は、ワーキンググループの議論と対比し「カルチャーの改革そのもの。クロフツ氏の話と思想は同じ」などと述べ、今後、新たな枠組みの完成に向け取り組んでいく考えを示した。