コアライト 除染現場に毎週足を運んで自社製品による成果に喜びを感じる
環境ソリューションを提供するコアライト社は、太古の動植物や藻類などが泥とともに堆積し変成した千枚岩を原材料とした有機物向け凝集沈降剤「COALITE-S」などを用い、福島の除染事業などを行っている。原材料を産出する鉱山のある韓国と日本を毎週往復し、福島のため池除染現場から取材に直行してくれた同社のキム・チョルス(金哲壽)代表取締役社長兼会長に話を伺った。
<所有鉱山から産出したゴールドライトの性質を活かして福島の除染に貢献>
コアライト社設立前の1996年より、韓国に鉱山を所有、オーナーの立場から鉱物について研究してきた。産出した鉱物を難燃剤などに加工する日本企業に輸出し、取引先では好調な業績を上げている。
2011年に福島第一原子力発電所事故が起こった時、所有する鉱山からの原材料を活用して問題を処理できるはずだと考えついた。産出しているゴールドライト(千枚岩)は多孔質で放射性セシウムを非常によく吸着するという性質を持っている。
2013年に開発した千枚岩を砕いて粉末状にした凝集沈降剤「COALITE-S」は、水に入れてかきまぜると、すぐに不純物を吸着して下へ沈殿する性質を活用したもの。汚染水をCOALITE剤で処理すると、約40分の1まで含有セシウム量を減らすことができる。また、短時間で吸着するので、1日あたり250トンの水量を処理することが可能だ。さらに、COALITE剤は無機系の凝集剤であり、処理後には上層の水が澄んだきれいな水となるので、もう一度循環させて除染に使うことができ、処理コストの軽減にもつながる。
当初は韓国人でよそ者と見られたためか、製品を評価してもらい受け入れてもらえるのに時間がかかり、なかなか軌道に乗らなかった。しかし高千穂交易の創業者の1人である栃本京子氏(現在は弊社取締役)の協力を得て、2015年に株式会社コアライトを設立することができ、COALITE剤の本格的な販売が始まった。
<ため池除染技術公募に登録され、現場に毎週足を運んで地元からの信頼も得る>
2015年12月には、ため池除染の実証実験で、弊社のCOALITE剤の有効性が高く評価された。そして翌年3月には、農林水産省「ため池の放射性物質対策技術マニュアル」で、弊社が開発した有機物向け凝集沈降剤「COALITE-Sため池用」が使用凝集剤として指定された。その後も実証試験を続けて除染効果を検証していき、同年9月からため池除染への本格的な挑戦が始まった。
弊社はメーカーとしてCOALITE剤を提供するだけの立場だが、必ず現場に出向いて適正量を守って正しい手順で除染が行われているか毎回確認している。ため池の底の土は長い年月をかけて溜まっており、雨が降るとまだ除染していない山からセシウムを含む土砂が流れ込む。さらに水流や生息する生物などの条件によっても土や水の性質が違うので、ため池ごとに調整しながらCOALITE剤を投入する必要がある。
2011年に福島を訪れた時から今に至るまで6年間、毎週金曜に韓国にある鉱山(偶然にも漢字では「郡山」と書く)の生産や開発のために飛行機で帰り、水曜にまた福島に戻って除染現場に立ち会うという生活を繰り返している。
毎回現場で一つ一つの除染に真剣に取り組み、弊社の優良な製品で勝負してきた結果、「いろいろな製品を試しても除染できない本当に難しい汚染土だったが、COALITE剤を使うことでようやく十分なレベルの除染ができた」との言葉をいただけるようになり、とても嬉しく思っている。また、今年あたりからほぼ日本語で仕事をするようになった。福島テレビでは弊社のコマーシャルも放映され、コアライト社の名も知られるようになった。
<汚染物質の減容化に向け、長期にわたる取り組みにも意欲>
福島県はほぼ放射線の心配がない地域が多くなってきているが、部分的に高線量の場所もあるため、除染や減容化が急がれる。特に住民が帰還した地域では、人が近づく可能性のある場所を優先的に手掛けて、特に農業利用に使うため池は最優先としている。長い間暮らしてきた住民たちに故郷に戻ってきてもらうためにも、早くきれいに除染し、かつての生活を取り戻してもらいたい。これが自身の使命だと思っている。
弊社は、これまで南相馬や浪江町などを除染してきたというプライドがある。本当に福島のために仕事をする会社として、地域の助けになりたいという気持ちでいつも取り組んでいる。弊社のCOALITE剤が、福島のために役立っていることに大きな喜びを感じている。
次の課題は汚染土や汚染水の減容化で、これも長い時間が必要となるが、もしも今後数十年かかるとしても福島で仕事を続けていく覚悟がある。弊社は精神的にも福島の会社だと考えている。