エネ調基本政策分科会、経団連など4団体からヒア

2018年2月20日

 総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=坂根正弘・小松製作所相談役)は2月20日、エネルギー基本計画見直しの議論に資するため、日本経済団体連合会など4団体からヒアリングを行った。
 経団連は昨秋公表した「今後のエネルギー政策に関する提言」について説明した。「エネルギー問題は国民生活と事業活動の基盤となる極めて重要な政策課題」との基本姿勢に立ち、「S+3E」(安全性、安定供給、経済合理性、環境適合性)のバランスが取れたエネルギー政策を実行すべく、政府には2015年策定の2030年ミックス(電源構成で原子力20~22%、再エネ24~22%、火力56%)の実現に向け、取組強化を求めるとしている。原子力比率に関して、既存プラントのみでは、40年運転で30年ミックスは達成できず、60年までの運転延長を見込んでも2040年代前半に20%を下回るという電気事業連合会の試算を示し、リプレース・新増設を政府施策に盛り込むべきとの考えだ。
 また、日本商工会議所も昨秋公表の「エネルギー基本計画見直しに対する意見」について述べ、2030年のエネルギー政策実現に向けて強化すべき取組を、(1)「S+3E」の堅持、(2)エネルギーミックスの実現、(3)電力コスト削減、(4)低炭素技術イノベーションの積極的推進、(5)地域特性を活かした二次エネルギーの多様化――に整理し説明した。その中で、エネルギーミックスの実現に向けては、原子力発電所の早期運転再開とともに、新増設・リプレースの是非について検討を開始すべきとしている。さらに、電力コストの上昇が企業経営に与える悪影響に関して、エネルギー多消費型産業が集まる川口新郷工業団地の事例を示し、電気料金が震災前より依然として高い現状をあげ、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の根本的見直しなどを図るよう求めた。
 日本労働組合総連合会は、原子力エネルギーの利用について、代替エネルギー源が確保されるまでの間活用するが、中長期的には依存度を低減し、最終的には依存しない社会を目指す政策を推進すべきとしたほか、労働者の立場から、低炭素社会移行に伴う経済・社会情勢の変化が雇用に悪影響を与えぬよう対策を講ずるべきと訴えた。
 全国消費者団体連合会は、エネルギー基本計画の見直しに向け、(1)徹底的なエネルギーの効率化、(2)脱炭素社会に向けた自然エネルギーの最大導入、(3)原子力発電所の新増設・リプレースに反対、(4)石炭火力発電所の新設に反対、(5)大規模集中型から地域分散型への転換、(6)国民への情報提供と共有化のためのコミュニケーションを活発に――を意見として述べた。原子力発電については、「消費者は福島の事故を忘れることはない」などと、事故への不安を始め、廃棄物処理、コストなどに対する不信感を強調した。
 これらを受け、委員からは、安全性に優れた小型原子炉を地域分散型電源として検討するよう求める意見や、各エネルギー源について「どの程度の安全を求めるのか」をベースに今後議論していくべきなどといった提案があった。
 坂根分科会長は、前日のドイツの専門家による気候変動・エネルギー政策に関する講演を振り返り、「ドイツは隣国との電気のやり取りができるが、日本は島国。ものすごく大きな制約・条件があることを感じた」などと、自然エネルギーを普及していく上で技術開発を活性化させる必要性を示唆した。