福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(2)
福島第一原子力発電所の廃止措置において、汚染水対策は、中長期ロードマップでも筆頭に位置付けられる極めて重要な取組である。「長く続く廃炉の基盤を整備していくこと」、内田俊志・同所長が2016年7月の着任に際し、自身の使命として強調した言葉だ。現場では、地域の方々の不安解消は言うまでもなく、廃炉を支える作業員が安心して働ける職場であるため、予防的・重層的な汚染水対策の取組が、「取り除く」、「近づけない」、「漏らさない」の3つの基本方針のもと、たゆまず進められている。
汚染源を「取り除く」
汚染水処理は、(1)原子炉建屋の滞留水から主要な放射線源であるセシウムをセシウム除去装置により低減、(2)原子炉冷却水として使用するため淡水化装置により塩分を除去――するとともに(循環注水冷却)、(3)タンク貯留水の放射性物質濃度を多核種除去設備(ALPS)により低減する浄化システムだ。トリチウムを除く62種類の放射性物質を除去するALPSは、既設のものに加え、設備増設による汚染水浄化の加速、より処理効率の高い高性能設備の導入が行われ、これまでの処理量は885,000立方mに上っている(2月22日時点)。一方、処理後に残るトリチウム水でタンクの数が増大すれば、漏えいのリスクもまた増大しうることから、大量に貯蔵するトリチウム水の取扱いが喫緊の課題となっている。
汚染源に水を「近づけない」
原子炉建屋内への地下水流入量を低減させることで汚染水の増加を抑制する陸側遮水壁は、1~4号機を囲む総延長約1,500mの「氷の壁」を地中に築く汚染水対策のカギとなるものだ。
2014年3月の試験的凍結開始から4年、東京電力が3月1日に発表したところによると、汚染水発生量は、陸側遮水壁閉合前の4分の1程度の約140立方m/日(2017年12月~18年2月の平均)にまで減少しており、中長期ロードマップで2020年内を達成目標としている150立方m/日を既に下回っていることなどから、「建屋に地下水を『近づけない』水位管理システムが構築された」と評価されている。「延べ約34万人もの力があってこそなしえた」、同社福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは、同日福島県内で行われた記者会見で力を込めた。特に現場をリードした協力企業としてあげた鹿島建設の土木技術者によると、凍土方式は、「他の工法に比べて実現性の高い工法」と自信を持って語る一方、「『線が引けない状況からのスタート』という不安があった」とも話している。
陸側遮水壁の設置に際して、資源エネルギー庁の有識者委員会では、粘土壁、グラベル(砕石)連壁も検討していたが、遮水効果、施工性などに優れる凍土方式が適切と判断された。例えば、地盤を切削し砕石を充てんするグラベル連壁は、壁内にポンプを設置し上流の地下水を汲み上げ、水位を管理する方式だが、凍土方式と比べて、施工エリアでは全長約2,000mと1.3倍を必要とするほか、掘削土の発生量も多くなるなど、続く廃炉作業に与える影響や環境保全に係る問題も懸念される。
「一番の違いは地下水を遮断する距離が長いこと」、これまで多くの施工実績を有する鹿島建設だが、福島第一原子力発電所における凍土造成量は、国内では過去最大規模となるおよそ70,000立方mと見込まれ、さらに、現場の線量や他の廃炉作業との兼ね合いから、1作業班当たり3時間まで、ほとんどが夜間中という極めて困難な状況下、地道に建設工事は進められた。
「『いつまで使うのか』がまだ明確ではない」、既に凍結工法は地下鉄のシールドトンネルなど、都市部で多数の施工実績があるものの、福島第一原子力発電所における先の長い廃炉作業を支えるものとしては、耐用年数も気がかりだが、2014年のフィージビリティ・スタディ(小規模凍結試験)の段階で、凍結管などのメンテナンスや交換も簡易に行えることを確認したとしている。
*鹿島建設の取組について、詳細はこちらをご覧下さい。
汚染水を「漏らさない」
中長期ロードマップでは、2018年度内を目標に、浄化処理した水の貯水を、すべて溶接型タンクで実施することとしており、「漏らさない」が一層強化される。 (続く)
*「福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(1)」はこちらを、「福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(3)」はこちらをご覧下さい。