福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(3)

 福島第一原子力発電所の事故発生時、運転中だった1~3号機の原子炉にはメルトダウンによって溶け落ちた燃料デブリがある。燃料デブリは、原子炉圧力容器だけでなく、それを覆う原子炉格納容器の下部にまで広範囲に存在しているものと推測される。
 1~3号機では、中長期ロードマップで2019年度としている初号機の燃料デブリ取り出し方法確定を目指し、遠隔操作ロボットによる原子炉格納容器内部調査で得られたデータなどを分析し、現在、次の調査へ向けた準備・対策を進めている。

2号機原子炉格納容器内部調査では数々の改善が

改良された原子炉格納容器内部調査装置(東芝京浜事業所にて)

 1月に2号機では、原子炉格納容器内部調査が実施され、ペデスタル(原子炉圧力容器下部)底部に、燃料集合体の一部が落下していることを確認し、その周辺の堆積物は燃料デブリと推定された。同機に投入された装置は、伸縮式パイプの先端に取り付けたカメラ、線量計、温度計を、釣りざおのように吊り下ろすものだ(=図、東京電力発表資料より引用)。

東芝エネルギーシステムズの露木陽氏(右)と浦西敦義氏、「『ハイテク』と『シンプル』のいいところを結集した」と

 2号機の原子炉格納容器内部調査は、2017年1~2月にもサソリ型の自走式調査装置で実施されているが、今回用いた装置は、ペデスタルの底部にまでアクセスし、より詳細なデータを取得することが求められたため、伸縮式パイプの延長、吊り下ろし機構の追加、線量計・温度計の搭載など、幾つもの改善が施されている。開発に当たった東芝エネルギーシステムズの技術者によると、カメラの小型軽量化とともに、「霧に照明が反射して視界が悪くなる」のが課題だったが、カメラと照明の距離を調整する機能を追加し、視認性の向上を図ったとしており、「状況に応じた開発をフレキシブルに進めてきた」ことが成果に結び付いたなどと振り返っている。

同じく稲田貢一氏(右)と中原貴之氏、「社会から関心を持っていただけることは大変なモチベーションに」と

 燃料デブリの取り出しは廃炉に向けて、最も困難なミッションだ。「人間の入れる場所ではない」、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは、2月初頭の月例記者会見で、今回調査で得られたデータを示すとともに、安全かつ着実な燃料デブリの取り出しに向け、さらに遠隔操作技術が開発される必要性を示唆した。

*東芝エネルギーシステムズの取組について、詳細はこちらをご覧下さい。

進む労働環境改善
 2015年に稼働した「福島給食センター」(大熊町)は、2017年12月に100万食提供を達成した。福島県産の食材を使用した温かくておいしい食事で、福島第一原子力発電所で働く作業員たちを応援している。

「福島給食センター」が提供する定食(他に丼物や麺類もある、大型休憩所にて)

 食事スペースがある大型休憩所に2016年にオープンしたローソンでは、2018年2月から、できたてのコーヒーの販売も始まった。また、全面マスク着用を不要とするエリアの拡大は、作業員の身体的負担の軽減だけでなく、コミュニケーションを円滑に図る上でも適切に進められることが必要だ。長く続く廃炉作業が着実に進展する上で、こうした労働環境の改善も一層求められるところだ。 (完)

*「福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(1)」はこちらを、「福島第一原子力発電所廃止措置 現地で見る2018年の見通し(2)」はこちらをご覧下さい。