日韓原産ジョイント・フォーラム開催 原子力安全や廃炉に関する最新の知見を共有

2018年5月8日

 原産協会は5月8日、韓国原子力産業会議(KAIF)との共催により原子力安全・廃炉ジョイント・フォーラムを都内で開催し、日韓両国から約200人が参加した。
 カン・ジェヨル韓国原産会議常勤副会長は開会挨拶で、廃炉が進んでいる日本と今年古里1号機で廃炉作業を開始する韓国との間で開催される今回のフォーラムが意義深いものであると強調し、廃炉技術を海外へも展開していくことに意欲を見せた。
 続いて高橋明男原産理事長が、原子力発電所の安全性はもとより、高経年化および廃炉に向けた対策がますます重要となってきている中、今回のフォーラムで最新状況および知見を共有して今後の協力促進につなげていくことに期待を寄せた。
 来賓挨拶でペク・ウンギュ韓国産業通信資源部(MOTIE)長官は、韓国では経済性よりも安全や国民理解を得ることを最優先としてエネルギー政策のシフトが進んでいることを説明し、「3人寄れば文殊の知恵」「紙一枚も一緒に持てば軽い」と双方の国の諺を例に挙げながら、日韓協力によって廃炉を効率的に進めていけると強調した。
 保坂伸経済産業省資源エネルギー庁次長は、まず福島復興と福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策が最重要課題であることに触れ、放射性物質濃度の上昇はなく周辺海域は安全であることに韓国側参加者からの理解を求めた。また、日本では2017年8月よりエネルギー基本計画の検討作業に着手しており、原子力に対する厳しい声もあるが、官民挙げて国民の不安に真正面から応え、様々な課題への取り組みを着実に進めていきたいと意欲を語った。
 講演では、ナ・ジャンファン韓国水力原子力中央研究所安全技術センター所長が、韓国での複数基立地原子力発電所の安全性向上について説明。電源喪失の際にも既存設備に加えて、可搬式電源やユニットごとでなく敷地単位での電源を確保する緊急時対策などを紹介した。
 増田尚宏東京電力ホールディングス執行役副社長は、福島第一原子力発電所の現状について、各号機とも冷温停止状態を継続し、海水中の放射線濃度も事故直後の10万~100万分の1まで低下していることを報告。地域や国際社会に対して積極的に情報を発信して、懸念事項については丁寧な説明を行い、責任を持って廃炉に取り組むことを強調した。
 ユ・ジョンム韓国電力技術廃止措置事業室長は、韓国で進める古里1号機の廃止措置について、2032年末までに環境復元までを含め全工程を完了する計画を提示。同計画に沿って、廃炉サイトの特性評価や汚染範囲の特定などを進め、放射性廃棄物処理施設の設計などについても説明した。
 富岡義博電気事業連合会理事・事務局長代理は、安全確保を大前提に、自給率、電力コスト、温室効果ガス排出量の3つの視点からエネルギーミックスを検討する上で、原子力発電所の早期稼働および寿命延長、リプレイスは必須であると言及。今夏にも日本の原子力産業界による新組織を発足させ、安全対策の効果的な立案と現場への導入を強化していくとした。