東光鉄工 鉱山事業で培った技術と精神で過酷な環境にも耐えうる多様な製品を提供

2018年5月16日

 来年創業80年を迎える東光鉄工は、時代の変化に対応しながら鉄鋼加工などを主力として、ものづくりの歴史を育んできた。倉庫・工場として活用されているアーチ状の構造体「TOKOドーム」や、機体開発から操縦講習まで行うドローン事業などは広く注目を集めている。虻川東雄代表取締役会長兼社長に話を聞いた。

虻川東雄代表取締役会長

<鉱山トンネルの坑枠技術を活かしたベンダー事業など多岐にわたって展開>
 東光鉄工は1938年に東京で開業。戦時中の1944年に疎開して秋田県大館市に移り、1960年代の黒鉱開発ブームとともに業務の7割以上が鉱山に携わる仕事になった。第一次オイルショックなどを受けて鉱山関連の事業からは撤退したが、地下トンネル坑枠の技術が「曲げの東光」として現在のベンダー事業につながっている。他にも、鉱石を掘り出す機械やコンベア、クラッシングのプラントや水処理、多様な機械の製作や修理など、それぞれの分野で積み上げてきた技術を今日の事業に活かしている。
 現在では主に、鋼構造物、機械装置、プレス金型などの設計製作や施工据付などを手がけている。特に、トンネルの型枠や道路シェルターなどのベンダー事業や、特許製品のTOKOドームをはじめカーポート(車庫)や防災シェルターなどのドーム事業などで、豊富な納入実績がある。また、高層ビル対象のHグレード認定工場で大館樹海ドームの連結部など様々な形状に対応できる鉄骨事業や、高度な溶接技術で水処理関係や各種プラントなどの製作や据付を行うインフラ鉄構事業のほか、橋の新設や補修なども請け負って安全な生活基盤を支えている。さらに、印刷機のロール機や航空機の部品などの製造、ライン検査設備やタイヤの試験機などの産業機械の設計製作、携帯電話の金型や医療ゴムの栓を抜く金型など精密部品の製造、クレーンや各種機械設備の点検や修理などのメンテナンスなども行っており、巨大な建造物からミクロン単位のエレクトロ製品までカバーしている。そして、マルチコプターの開発製造や販売および各種サービスを手がけるUAV事業では、農薬散布用ドローンが今年量産体制に入ったほか、農林水産省と国土交通省から指導ライセンスを取得し、操縦者に講習して免許の発行も行っている。

TOKOドーム外観

<六ヶ所工場での仕事をきっかけに原子力発電所にも多くの納入実績>
 1990年代に入ると、六ヶ所村でのウラン濃縮工場の洗缶施設事業を三菱重工の下請けで受注した。これをきっかけに、六ヶ所での低レベル放射性廃棄物セメント固化装置や搬送用クレーン上部なども手がけ、組み付けや建て打ちを行ってトラックで現地に運んだ。さらに高レベル放射性廃棄物ガラス固化の前工程や電力会社との立ち会い検査などにも携わった。六ヶ所では現在も、納めた設備のメンテナンスを行っているほか、常設売店を設置して作業ツールを販売している。
 その他、女川原子力発電所では鹿島建設のもと、1万トンあまりの防潮堤骨組のうち約6割を担当した。新しい規制基準対応では、東海第二発電所の入り口に津波対策用の水門ゲートを設置した。建屋や機械類、クレーンなどは多くの原子力発電所に納入している。弊社では原子力仕様の溶接ができるのも強みである。
 福島第一原子力発電所事故時には、がれきコンテナを緊急に100以上作って被災地に納めた。また、灰固形化物の一時保管庫としてTOKOドームが南相馬市や葛尾村に設置されている。
 リプレースや廃炉に関わる作業なども含めて、原子力関連の仕事はこれからまだまだ出てくると考えているので、役に立てればと考えている。

<過酷な環境にも強く簡易に設置できるドーム型製品は南極でも活躍>

ドーム内を案内する藤垣英明ドーム事業部事業部長

 六ヶ所は天候の変化が激しいため、作業用テントが飛ばされたり、強風の騒音で仕事ができなかったりすることがあったことから、鹿島建設が開口部15m×高さ7.6m×長さ90mのTOKOドームを両端開閉式仮設加工場として採用した。ここから竹中工務店、日立製作所、東芝などにもドームを納品することとなって、東通、大間、島根、志賀など各地の原子力発電所でも利用されている。
 同じくドーム型で「火山災害から登山者を守る」をキャッチフレーズとするTOKO防災シェルターは、火山噴石にも耐えられるよう、防衛大学校で時速300kmの衝突実験を行い、貫通しないことを証明した。さらに現在は核シェルターも試作している。
 施工が簡単で高強度なTOKOドームは高い評価を受けて、南極の昭和基地でも重機車庫や廃棄物保管庫として使われている。ここ10年で延べ9人の社員が南極に行き、設営やメンテナンスなど現地で様々な対応を行っている。

<技術力の確かな社員を育成し地域とともに歩む>
 東光鉄工の年間方針は、グループ会社の社員全員や顧客、新入社員の母校の先生や父兄まで集めて、社員一人一人の売り上げも含めて数値目標を発表して、透明性の高い経営を徹底している。また、毎年ドーム内で社員家族も含めた大運動会や、業績達成後の海外社員旅行を実施するなど、地域社会や社員同士のつながりを大切にしている。
 今年は14名が入社し、そのうち4名は女性だが、早く技術を学んで南極へ行きたいと意気込んでいる者もいる。弊社では1人1資格を必須としており、保持資格が待遇に直結するライセンス制としているため、若い時期から技能士等の資格取得に挑戦する社員が多い。この結果、高品質の製品を提供することができ、顧客からの信頼へとつながっている。