エネ庁小委員会、福島第一のトリチウム水処分に向け説明・公聴会開催へ
資源エネルギー庁の福島第一原子力発電所事故対策に関する小委員会は5月18日、多核種除去設備(ALPS)での処理後に残るいわゆるトリチウム水の処分に伴う社会的影響について整理した。今後、風評被害への懸念などを把握すべく広く意見募集を行うとともに、説明・公聴会を開催する運び。
福島第一原子力発電所で汚染水浄化を行うALPSにより処理された水には、自然界にも存在するトリチウムが含まれるが、トリチウムのベータ線はエネルギーが非常に弱いため外部被ばくの影響はほとんどない。多核種除去設備により処理された水は約88万立方m(5月10日時点)に上っており、タンクでの貯蔵量増加が廃炉作業に及ぼす影響や漏えいのリスクなどから、早急な対策が求められている。
2014年6月、資源エネルギー庁の専門家タスクフォースは、諸外国の事例を踏まえ、トリチウム水の長期的取扱いについて、「地層注入」、「海洋放出」、「水蒸気放出」、「水素放出」、「地下埋設」の各選択肢について、技術的観点から評価した報告書をまとめた。これを受けて、小委員会では、農業・水産関係者、小売業者、リスクコミュニケーションの専門家からのヒアリングや現地視察を実施し、風評被害などの社会的観点も含め総合的検討を行ってきた。
小委員会は18日の会合で、ALPS処理水の処分に伴う社会的影響について分析し、「健康・環境への影響は非常に低く、生活・経済(風評被害)や国際信用への影響が主となる」とした上で、処分する際には、情報を的確に伝えるリスクコミュニケーション対策と、風評被害防止・抑制・補填のための経済対策との双方を丁寧に実施することが必要との考え方を示している。
これまでの検討を踏まえ、小委員会では、「風評被害の問題については、福島県内で完結するものではない」との考えから、今夏以降、処理水の処分について説明し広く国民意見を聴取すべく説明・公聴会を開催することとした。日程・会場については検討中だ。