JANSI、新検査制度の導入見据え自主規制の基盤充実について討論
原子力安全推進協会(JANSI)は5月22日、都内で「アニュアル・カンファレンス」を開催した。会場には、OECD/NEAのウイリアム・マグウッド事務局長、世界原子力発電事業者協会(WANO)のジャック・リガルト議長、原子力規制委員会の更田豊志委員長が来賓挨拶に訪れ、安全性向上に向けた産業界による自主的取組に期待を寄せた。パネル討論では、「自主規制の基盤充実について」と題し、JANSIが目指す産業界一体となった継続的な原子力安全の向上の取組について、海外参加者も交え活発な議論が行われた。
元米国原子力規制委員会(NRC)運営総局長のルイス・レイエス氏は基調講演で、2020年度から実運用を開始する新たな検査制度において参考とされる原子炉監視プロセス(ROP)について、プログラムの確立や試験運用など、米国の経験を説明した。
これを受けて、原子力規制委員会の検査制度検討チームに参画する関村直人氏(東京大学大学院工学系研究科教授)が、まず、(1)原子力安全規制要求の強化、(2)設計基準事故に関わる考え方の変化、(3)安全性に係る設備・機器の付加とその重要度、(4)コストと達成時期――を現在の課題として掲げ討論に先鞭を付けた。
事業者からは、東京電力ホールディングス社長の小早川智明氏が福島第一原子力発電所事故を省みた「原子力安全改革プラン」の取組状況を、関西電力社長の岩根茂樹氏が「リスク情報を活用した意思決定」(RIDM)導入に向けた基盤整備についてそれぞれ説明した。RIDMの実行については、2月に電気事業連合会が、戦略プラン・アクションプランを公表しており、その中でも示されている是正処置プログラム(CAP)について、リーダーシップや人材育成の重要性など、多くの意見が交わされた。
また、新検査制度導入に際し、岩根氏が規制サイドとの対話の必要性を主張したのに対し、原子力規制庁検査監督総括課長の金子修一氏は、検査制度が有効な仕組みとなるよう努めるとした上で、事業者による自主規制活動ともスパイラル効果を発揮させ、安全性向上が図られることを期待した。
海外からは、フランス電力(EDF)グループ上級副社長のドミニク・ミニエール氏が、メーカーによる原子炉機器の品質問題への対応を例に、「事業者の一義的責任」の重要性を強調し、CANDUエナジー社長兼CEOのプレストン・スワフォード氏が、今後のJANSIの取組に向けて、「優秀な人材を集め、規制当局よりも先に問題点を見付けること」などと、大いに期待を寄せた。