日中原子力産業セミナー2018開催 安全性向上や小型炉開発など多様な課題を議論

2018年6月5日

 中国核能行業協会(CNEA)と原産協会は6月4日、両協会で初共催となる原子力産業セミナーを都内で行い、日中両国から約60人が参加した。
 基調講演では、武田伸二郎経済産業省原子力政策課原子力国際協力推進室長が、日本の原子力政策について、2030年時点で原子力発電比率を22~20%とするエネルギー基本計画や、国内原子炉メーカーが原子力発電所建設での海外展開を進めていることを説明するとともに、民間主導での原子力技術のイノベーションを図ることが重要だと強調した。趙成昆CNEA専門委員会常務副委員長は、中国の原子力産業の現状や今後の見通しについて語り、同業者間レビューや放射線モニタリングネットワーク強化などを通じた原子力安全向上への取り組み状況を紹介した。
 セッション1では、福島第一原子力発電所事故後の対応と安全性向上対策について議論が行われた。佐藤雄一東京電力福島第一廃炉推進カンパニー廃炉調査グループチームリーダーは、4号機の使用済み燃料取り出しを13か月で終えたことなど各号機での廃炉に向けた取り組みが着実に進展していることを説明。廃炉現場視察者が1万2千人を超え、進捗を実感する声が聞かれていることなどに触れた。黄小桁中国広核電力副社長(安全担当)は、中国で福島第一原子力発電所事故後に示された安全面で8項目の追加的要件(GSR)を挙げ、同社での緊急時電源の確保やレスキューチームの編成など具体的な改善例を提示した。鈴木究関西電力原子力事業本部危機管理グループマネジャーは、大飯発電所3、4号機再稼働に向けた緊急時対応チームの体制および対応能力の強化や事業者間での協力連携などを紹介した。鄒正宇中核核電運転管理副社長は、秦山原子力発電所1~3号機と方家山原子力発電所での複数基同時事故発生時の緊急指令センター連携体制や指揮系統などの工夫を語った。
 セッション2では、原子力技術の研究開発について情報を共有。田瑞航中広核工程副社長が中国での使用済み燃料乾式貯蔵について、国レベルで輸送モデルなどを検討していると述べた。浅野良二日立造船機械事業本部原子力機器推進室技術統括は、同社の使用済み燃料輸送および貯蔵キャスクの開発と製造の経緯を示し、今後長期貯蔵技術に注力していく見通しを語った。劉巍中国核電工程社長は、中国でACP100をはじめとするSMR開発について、安全性を高めて都市部に近い立地が可能となっていることなどを力説した。加来謙一原子力発電環境整備機構(NUMO)地域交流部広報第二グループ課長は、科学的特性マップを提示されたことなど日本での地層処分事業の状況について説明した。
 閉会挨拶で張廷克CNEA副理事長兼事務局長は今回のセミナーを通じ、福島の教訓に学び原子力発電所の安全を向上させていくことは長期にわたる原子力発電の持続的プロセスであると再確認したと語った。高橋明男原産協会理事長は、広範な分野にわたってスピード感を持って進めている中国の原子力界に刺激を受けたとし、今回のセミナーが相互の交流を広げるきっかけとなることを願うとセミナーを締めくくった。
 今回来日した中国の訪問団は今週、世界原子力発電事業者協会(WANO)東京センター、楢葉遠隔技術開発センター、福島第一原子力発電所、女川原子力発電所を訪問する。