2017年度科学技術白書が閣議決定、原子力は「クリーンなエネルギー」
2017年度科学技術白書が6月12日に閣議決定された。年度内に科学技術の振興に関して講じた施策について取りまとめたもの。
原子力については、「クリーンなエネルギー供給の安定化と低コスト化」を図る技術の一つとして取り上げており、安全性・核セキュリティ向上、核燃料サイクル、廃炉に伴う放射性廃棄物の処理処分、福島第一原子力発電所廃止措置に関する研究開発や、人材の育成・確保、平和的利用に係る取組などについて述べている。核燃料サイクル技術では、2016年12月の「高速炉開発の方針」決定を受け廃止措置へと移行されることとなった高速増殖原型炉「もんじゅ」を巡る取組について、立地自治体への理解活動なども含め、特に詳述された。
宇宙線ラジオグラフィの原理(科学技術振興機構の発表資料から引用)
今回の白書では、巻頭特集として、「SDGs(持続可能な開発目標)と科学技術イノベーションの推進」を取り上げている。また、巻末には、前回に引き続き、身近に活かされている科学技術の成果を紹介するコラム集を設けた。その中には、名古屋大学が2011~15年にかけて開発した宇宙線ミューオンと原子核乾板(写真フィルムの一種)を用いて物体の内部を透視する「ミューオンラジオグラフィ技術」も取り上げられている。透視したい構造物を貫通したミューオンの数分布を把握することで、構造物内部の密度分布を知るという原理だ。これにより、2017年には、エジプト・クフ王のピラミッド内部に巨大空間があることが発見されている。「ミューオンラジオグラフィ技術」は今後、大型社会インフラの点検や、福島第一廃炉におけるデブリ取り出しに向けた炉内調査への応用なども期待されている。