原子力学会新会長・駒野氏が会見、メーカーの経験活かし次世代炉の検討も

会見に臨む駒野会長と、右は山口副会長(東京・港区の原子力学会会議室にて)
原子力学会では、2012年から、「福島特別プロジェクト」として、被災地の視点に立った情報発信や技術協力に取り組んでおり、2018年度は、こうした復興活動とともに、原子力事故に関する論文・解説記事の英文化・公開などを通じ、蓄積された知見の世界への発信にも力を入れていく。汚染水対策の関連で、多核種除去設備で処理した後に残るいわゆるトリチウム水の問題について、駒野氏は、「水産学会や漁業関係者の風評被害に対する懸念の声も踏まえ、正確な情報発信を行っていきたい」と語った。
新たなエネルギー基本計画について、駒野氏は、「エネルギー自給率、電力コスト、温室効果ガス排出削減の観点から、原子力は当然必要」と述べ、再稼働に向けて、地元の理解獲得、敷地周辺の断層問題の解決などを課題としてあげた。さらに、「2050年となると新設も考えないといけない」と述べ、2018年度の活動として、安全性と経済性に優れた次世代軽水炉の検討・提言を行う考えを示した。
次世代炉開発に関して、会見に同席した原子力学会副会長の山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、世界の動向について触れながら、「これまで既設炉の安全性向上に努めてきたが、日本でも次の概念を検討する必要がある」と述べ、その必要性を強調している。
2019年2月に「還暦」を迎える原子力学会では、「60周年事業」として、来春のシンポジウム開催、学会誌特集号の発行などが計画されている。