IRIDシンポ開催、福島第一の燃料デブリ取り出しに向け学生からの研究発表も
国際廃炉研究開発機構(IRID)は8月2日、東京工業大学(大岡山キャンパス)で、福島第一原子力発電所廃炉における主に燃料デブリ取り出しに向けた研究開発成果を報告するシンポジウムを開催した(=写真上は開会挨拶、下はポスターセッションの模様)。IRIDは、廃炉を安全かつ着実に進めていくため、国内外の英知を結集する中核的役割として関係機関・企業が集まり2013年8月に設立された。今回のシンポジウムでは、学生による研究発表コンテストも行われ、原子力、機械工学、情報科学などを専攻する8名の学生たちが福島第一の燃料デブリ取り出しを見据えて取り組んだ研究成果を披露した。
IRIDの石橋英雄理事長は、開会挨拶の中で、福島第一の廃炉と福島復興への貢献とともに、「技術を通じて人材育成を図る」ことをIRIDの使命として強調した。
また、来賓として訪れた経済産業省の原子力事故災害対処審議官の新川達也氏は、福島第一廃止措置中長期ロードマップのスポークスマンとして報道機関に対応してきた経験を振り返り、「事故から7年経っても廃炉・汚染水対策は経産省の最重要課題」と強調し、「難しい燃料デブリ取り出しを、技術でいかに乗り越えるか議論して欲しい」と、シンポジウムの成果に期待を寄せた。
IRIDによる研究成果報告で、研究管理部長の清浦英明氏は、燃料デブリ取り出しに向け既に終了したプロジェクトの成果を紹介するとともに、現在進められている研究開発を調査技術と取り出し技術に分け説明した。調査技術では、これまで画像取得が中心だった原子炉格納容器内調査において、より多くの情報を得るため、大型のアクセス装置が開発段階にあり、また、取り出し工法についても、遮へい壁穴開けやトンネル施工など、各種要素技術の検証が行われているなど、技術開発が着実に進捗していることを示した。
学生による研究成果発表で、東北大学からは、粉体を充てんしたシリコンゴム袋がロボットハンドとなって物体把持や扉開閉を行う「ジャミング膜グリッパ機構」について、軟脆弱物を取り扱うことを想定し改良を加えた「柔剛切替ジャミンググリッパ機構」の実験評価が披露された(=写真中、ロボットハンドが物体に近付く〈左〉、ドラえもんの手のように物体を握り持ち上げる〈右〉)。また、東京工業大学からは、水中での燃料デブリ取り出し作業を想定し、水中アークプラズマの特性評価について発表が行われ、電流電圧特性では気中のものと大差がないことなどを示した。
講評を行ったIRIDの川村忠専務理事は、学生による研究成果について「すべて大変レベルの高いものだった」と賞賛し、今後も若手研究者が目的意識を持って取り組み、研究成果が現場に適用されていくことに期待を寄せた。