「福島第一廃炉国際フォーラム」開催、遠隔技術をテーマに広範な議論
福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、国内外の専門家が参集し技術的成果を共有するとともに地元住民と対話する「福島第一廃炉国際フォーラム」が8月5、6日に福島県いわき市・楢葉町で行われた。原子力損害賠償・廃炉等支援機構(山名元理事長)が主催するもので、今回で3回目の開催。1日目は楢葉町コミュニティセンターを会場に、福島復興で活躍する開沼博氏(立命館大学衣笠総合研究機構准教授)をファシリテーターに迎え、福島第一の廃炉について地元住民が「知る」、「話す」、「問う」セッションが行われた。本フォーラムで、地元住民と対話するセッションが設けられるのは前回2017年7月の広野町開催に続くもので、次回2019年8月予定のフォーラムでは富岡町にて行われる予定。2日目は、いわき芸術文化交流館アリオスに会場を移し、遠隔技術・ロボット技術を中心に海外での取組事例を紹介し話し合う技術セッションが行われた。
2日目の技術セッションでは、まず、山名理事長が挨拶に立ち、高い放射線環境下における遠隔技術の有用性に期待を寄せたほか、前日の住民対話セッションに600名を超す参加者があったことを振り返った上で、「市民と情報共有し、討論を通じて福島第一廃炉の技術的課題を考える」などと、フォーラム開催の意義を訴えた。
海外の事例としては、米国からサバンナ・リバー国立研究所副所長のジェフ・グリフィン氏が、ハンフォードとサバンナ・リバーにおけるサイト環境浄化の取組を紹介し、大量のタンク廃棄物など、福島第一との類似点をあげたほか、完遂させるカギとして、次世代の労働力確保、地元とのコミュニケーション、何よりも「やればできる」という姿勢を強調した。
この他、英国からセラフィールド社修復部技術部長のサイモン・キャンディ氏が、フランスから原子力・代替エネルギー庁民生施設解体措置本部調査・国際協力連携課長のクリスティーヌ・ジョルジュ氏が、それぞれ自国の取組について報告し、サプライチェーン総合力の強み、再処理施設の廃止措置における遠隔操作技術などを披露した。
また、他分野からは、米国航空宇宙局ジョンソン・スペースセンターソフトウェア・ロボット工学・シミュレーション課長のロバート・アンブローズ氏、核融合開発を行う英国原子力公社RACE所長のロブ・バッキンガム氏が登壇した。その中で、アンブローズ氏は耐放射線性のロボットによる試料採取など、福島第一廃炉との類似点をあげ協力の可能性を示唆し、また、バッキンガム氏はモックアップによる訓練の経験を紹介し、運転員の自信につながるとする一方で、慣れから生じる慢心に警鐘を鳴らすなどした。
パネルディスカッションでは、今後の遠隔技術に係る国際協力の展望として、共通の基準作りや失敗経験の共有などがあげられた。ロボット開発の分野で多くの功績を持つ淺間一氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、技術セッションで基調報告を行ったが、福島第一に導入したロボットで生じた失敗の要因として、通信の切断、操作ミス、放射線による機能不良をあげた上で、「失敗から学ぶことがまず重要」と強調している。