科博「未来技術遺産」発表、島津の医療用X線装置「ダイアナ号」などが選定
国立科学博物館は8月21日、科学技術史上、次世代に継承すべき重要な意義を持つ資料「未来技術遺産」に、19件を新たに登録することを発表した。「未来技術遺産」は、技術革新や産業構造の変化から、科学技術の発展を担ってきた重要な資料が失われつつある状況に鑑み、所有者に登録証と記念盾を交付し、定期的な現状確認を行うことで散逸を防ぎ着実に保存するというもの。2008年度の制度開始以降、今回を含め計259件の資料が登録されている。
今回登録された資料のうち、放射線関連では、島津製作所所有の最初期の医療用X線装置「ダイアナ号」(関連装置を含む、=写真〈島津製作所 創業記念資料館 提供〉)などがある。医療用X線装置のパイオニアである島津製作所が1920~23年に製作した「ダイアナ号」は、多様な目的に対応する汎用装置として開発され、当時求められていた安定した大出力による短時間撮影を可能にしたほか、現場で使用された形態を保持していることからも重要性が評価された。また、放射線治療機器にも用いられた初期のX線管として、東京電気(現東芝電子管デバイス)が1925年頃製作した「クーリッジX線管」(九州大学所有)も登録されている。
この他登録されたもので、生活に馴染み深いものとしては、新三菱重工業(現三菱重工業)が1962~69年頃製作した「ボトル自販機」(コカ・コーラ ボトラーズジャパン所有)がある。瓶入りの清涼飲料を、傾斜した収納棚から販売口に転がす仕組みを採用したもので、日本の自販機普及に顕著な役割を果たしたとしている。
また、稼働可能な状態での保存が特筆されるものとしては、富士通信機(現富士通)が1959年に製作したリレー式計算機「FACOM128B」がある。国産旅客機YS-11やカメラのレンズの設計に使われ、高度成長期の計算需要に応えたことが選定理由とされており、同機は富士通池田記念室(静岡県沼津市)に設計・製造・保守・運用に関わる資料とともに保存されている。派生機種の「FACOM128A」も同社川崎工場に動態保存されており、いずれも日本のコンピューター技術の歩みを示すものとして評価されている。
今回登録された「未来技術遺産」は、8月28日~9月9日に、東京・上野公園の国立科学博物館でパネル展示が行われる。