更田規制委員長、トリチウム水貯留の長期化は「廃炉を困難に」と懸念
原子力規制委員会の更田豊志委員長は9月5日の定例記者会見で、8月30、31日に行われた福島第一原子力発電所構内タンクのトリチウム水の取扱いについて意見を聴く公聴会に関する質問に対し、「丁寧なプロセスが進められており、判断を待つところ」などと述べ、現時点では状況を静観していく考えを示した。公聴会は、資源エネルギー庁の有識者小委員会により、8月30日に福島県富岡町で、31日に福島県郡山市と都内で開かれ、地元の漁業関係者も含め延べ44名が意見を表明した。福島第一で発生する汚染水を浄化処理する多核種除去設備(ALPS)ではトリチウムを取り除くことができないが、トリチウム水を廃棄することに伴う風評被害への懸念とともに、当面はタンクで貯留し新たな処理技術を模索・検討すべきといった声も多かった。
タンクでの保管を継続することに関し、更田委員長は、「5年、10年なのか、新たな選択肢が出てくるまで続くのか、時間のファクターによって答えも変わってくる。あらゆる選択肢を排除しないのはフェアなやり方だが、長期化することで廃炉プロセスに与えるインパクトは大きくなってくる」と述べた。
公聴会に先立つ8月29日の会見で、更田委員長は、環境放出の告示濃度制限が極めて保守的な設定となっていることを述べた上で、「科学的・技術的に、これを守る限り、人の健康や産品への影響は考えられない」と強調した。一方で、「人は一旦汚されたものがきれいになったとしても、心理的抵抗を持つのは当然」として、風評被害への懸念、広く意見を聴く意義への認識を示している。