規制委がNRRCアポストラキス所長らと意見交換、リスク情報の活用など

2018年9月11日

左より、規制委山中委員、同更田委員長、NRRCアポストラキス所長、同メザーブ顧問

 原子力規制委員会は9月10日、電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)のジョージ・アポストラキス所長らと意見交換を行った。NRRCは、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、大地震や大津波を始めとする自然災害など、低頻度だが大きな不確かさを伴う事象に対し、リスクを定量化する確率論的リスク評価(PRA)の手法も活用し、安全性向上のための研究開発を行い、原子力産業界の取組を支援する組織として2014年10月に発足した。
 アポストラキス氏は、元米国原子力規制委員会(NRC)委員で、PRAの分野で卓越した業績を有しており、NRRC発足当初から所長を務めている。この他、NRRCからは顧問で元NRC委員長のリチャード・メザーブ氏が、規制委員会からは更田豊志委員長と山中伸介委員が意見交換に臨んだ。
 アポストラキス氏は、日本の安全文化について、「規制対応にフォーカスした文化」が根付いており、リスク情報を活用する文化への移行は容易ではないなどと課題をあげた。一方で、米国の事例として、サンディア国立研究所によるザイオン原子力発電所他のPRAに対する網羅的レビューの経験や、学協会による標準策定など、NRCと相補的に取り組みPRAの品質確保につながっていることを紹介した。
 また、「リスクはプラント固有のもの」と強調し、かつてNRRCの技術委員会で、PRA活用のパイロットプラントである四国電力伊方3号機の取組に関する説明者がメーカーだったことに対し、「プラントを熟知した電力会社自らが説明すべき」と指導したなどと述べた。これに関し、更田委員長も「リスク解析の取組は社内で行われるべきもの」と述べ、安全確保の一義的責任は事業者にあるという考えを示唆している。
 2月に行われたNRRCシンポジウムで、電気事業連合会は「リスク情報の活用に向けた戦略プランおよびアクションプラン」を公表しており、PRAの品質向上に向けて、産業界の取組も進みつつある。アポストラキス氏は、こうした日本における動きを「重要なステップ」と評価した。
 プラント関係の審査を担当する山中委員は、今秋からの新検査制度の試運用開始にも言及し、「PRAの結果を活用し、コミュニケーションのツールとする必要がある」などと述べ、信頼関係の構築につながることに期待を寄せた。