原産協会が女性シンポ開催、脳科学者の中野信子氏らが登壇

2018年10月4日

トークセッションに臨む中野氏(左)と鈴木氏

 原産協会は10月3日、女性シンポジウム「あなたに伝えたいメッセージ:仕事に活かす脳科学、エネルギーのこと」を、日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、会員企業に所属する約110名の女性が参加した。シンポジウムでは、脳科学者の中野信子氏と量子科学技術研究開発機構の鈴木國弘氏が講演を行い、トークセッションでコミュニケーションのあり方などが話し合われた。
 中野氏は、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に研究者として勤務した経験を持ち、脳・心理学をテーマとした研究・執筆活動やテレビ番組のコメンテーターなどで活躍している。同氏は、お菓子のラベルを張り替えるだけで「人が感じる味は変わる」という実験、つまり、人間はラベルを見て高価なお菓子や有名なパティシエが作ったお菓子をおいしいと思う、という話を披露した。こうした「味覚はブランドに左右されるもの」という分析の他、様々な実験結果を例示しながら、人間が何かを選ぶときに働く脳の機能についてわかりやすく説明した。
 また、鈴木氏は、先の北海道胆振東部地震による広域停電を切り口に、「電気は使うときに作らねばならない」という他と異なった特徴から、電力需給バランスの重要性について強調した。その上で、同氏の大型プロジェクトや広報に係った経験も踏まえ、化石燃料の限界とともに、太陽光・風力発電については「密度が薄く広がっているため、集めるのにコストがかかる」といった難点を示しながら、将来のエネルギーに向けて「選択肢は一つではない」などと、科学的に理解する必要性を述べた。
 トークセッションで、中野氏は、海外での勤務経験を通じ、「考えたことをきちんと話す訓練ができていない」などと、日本におけるコミュニケーションの問題を指摘した。また、鈴木氏も、広報に関わる立場から、「難解な専門用語や数式を使うと、人は何も聞いてくれない」として、科学技術について人に伝えるコミュニケーション能力の重要性を強調した。