エネ研が2050年を展望した世界のエネルギー需給見通しを発表
日本エネルギー経済研究所はこのほど2050年までの世界エネルギー需給や気候変動対応を展望する「IEEJアウトルック2019」をまとめ、10月15日にその報告会を都内で開催した。(=写真)
それによると、世界のエネルギー需給は、今後も趨勢的な推移を想定する「レファレンスシナリオ」で、一次エネルギー消費が、2016年の138億トン(石油換算)から、2050年には193億トン(同)まで増大し、増分の55億トン(同)は、中国、米国、日本の現消費量に匹敵するものと分析している。
OECD加盟国全体では横ばいもしくは減少傾向で推移し、増分のほとんどは非OECD加盟国が占め、特に世界最大の消費国である中国は、2040年代半ばにエネルギー消費量が40億トン(同)弱でピークに達するとしている。一方、インド、ASEAN諸国、MENA諸国(中東・北アフリカ)は、急速な経済成長と人口増加に伴い、エネルギー消費量は堅調に増加し続け、中でもインドは2040年代半ばに米国と入れ替わり世界第2の消費国となる見通し。
化石燃料については、石油が2050年においても世界のエネルギー需要の3分の1を支える最大のエネルギー源であり続け、天然ガスは消費量を大きく伸ばし2030年代半ばに石炭を抜いて第2のエネルギー源になると予測している。また、石炭の消費量は、緩やかに増加し2040年代半ばには減少傾向となるが、大気汚染対策などから減少に転ずる中国とは逆に、インドとASEANでは2050年の石炭依存度が現在より高まり、世界の石炭消費の実に82%がアジアに集中する見通し。
電力供給については、2050年に世界の発電電力量は2016年のほぼ倍増となり、再生可能エネルギーのシェアが伸びるものの、火力発電が中心となる大枠に変化はないとしている。原子力は、世界全体の設備容量で、2016年の406GWが2050年には518GWにまで、発電量も1.3倍に拡大するが、総発電量の急激な伸びには追いつかず、発電量全体の構成比では3ポイント低下するなどと分析した。
エネルギー起源のCO2排出量については、2050年に419億トンまで増加する見通しだが、省エネ・低炭素技術が最大限展開されることを想定した「技術進展シナリオ」によれば、2020年台半ばをピークに緩やかな減少に転じ、2050年には2016年比約11%減の287億トンになるとしている。「技術進展シナリオ」で、2050年の原子力発電の設備容量は、中国、インド、東南アジア諸国の躍進や、新興国での運転開始を見込み848GWを想定した。
今回のアウトルックには、「石炭火力の新設を2020年以降全面的に禁止し、天然ガスまたは再生可能エネルギーで代替」とのシミュレーションも盛り込まれたが、CO2排出量の減少につながらず、同研究所計量分析ユニットの桝澤明氏は「これだけで気候変動問題は解決できない」などと述べている。