原子力総合シンポ開催、新たなエネルギー基本計画巡り議論

2018年10月23日

  原子力総合シンポジウムが10月22日、東京・六本木の日本学術会議講堂で行われた。学術会議が日本原子力学会他関連学協会と共催で毎年開催するもので、今回は、「エネルギーの将来における原子力の位置付け」などをテーマに討論がなされた(=写真)。
 エネルギー政策に関する討論では、まず、資源エネルギー庁政策統括調整官の小澤典明氏が、7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」の策定経緯・概要について説明した。従前の基本計画に基づく「2030年ミックス」の確実な実現を目指すとともに、2050年に向けて「エネルギー転換・脱炭素化への挑戦」を見据えたシナリオ設計を図ることとされている。原子力については、安全を最優先に再稼働を進め、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電の効率化などにより、可能な限り依存度を低減するとされた。
 これを受け、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会でエネルギー基本計画の検討に関わった東京理科大学イノベーション研究科教授の橘川武郎氏は、原子力発電所の再稼働が進まぬ現状と、近年の廃炉の進展から、「2030年ミックス」で示す原子力の総発電電力量に占める比率「22~20%」の達成は困難と指摘した。その上で、60年まで運転期間を延長しても、既存のプラントだけでは2069年に原子力ゼロになるとして、2050年のシナリオ設計で掲げる「脱炭素化の選択肢」であるためには、「リプレースを言わない原子力政策はありえない」などと主張した。
 また、長期的なエネルギーの将来像を検討する「エネルギー情勢懇談会」に参画した大学院大学至善館専任教員の枝廣淳子氏は、まず、「未来の考え方が変わった」と所感を述べ、人口減少など、日本のエネルギーを巡る情勢変化から、「2050年以後、原子力発電は必要なのか」と問いかけた。
 一方、東京大学大学院工学系研究科准教授の小宮山涼一氏は、「原子力は有効なオプション」との考え方から、「これまで蓄積されてきた原子力の技術、人材、知見・ノウハウは財産」とした上で、それらを維持するためにも「新増設は極めて重要」と強調したほか、新型炉開発の必要性や他分野への波及効果にも言及した。
 事業者の立場からは、電気事業連合会副会長の廣江譲氏が現在の原子力発電に関わる取組として、(1)自主的安全性向上、(2)再稼働、(3)核燃料サイクルの推進――について説明した。60年までの運転期間延長、設備利用率80%として、2030年の原子力比率「22~20%」は達成できるとしており、2050年に向けては、「一定量の原子力は必要。リプレース・新増設も時間をおかずに進めていく必要がある」などとした。
 小宮山氏は、原子力発電プラントの80年運転が検討されている米国と比較し、「日本では60年運転の経験もまだない。確実に運転実績を積み、60年運転を視野に入れたメンテンス技術を確立すべき」などと述べた。また、枝廣氏は、原子力立地地域で賛成・反対の人を交え3年間行った対話活動の経験も踏まえながら、分散型電源の有効性を、「地域が自らレジリエンスを高めていくという意味がある」などと主張した。