高速実験炉「常陽」の審査、安全対策と性能確保を踏まえ熱出力10万kWに変更

2018年10月29日

 日本原子力研究開発機構は10月26日、高速実験炉「常陽」(=写真)について進められている新規制基準適合性審査に関し、熱出力を14万kWから10万kWに変更するなどした補正書を、原子力規制委員会に提出した。原子力機構は、2017年3月に「常陽」の新規制基準適合性審査を規制委に申請したが、その後の審査途上において、(1)熱出力と設備の整合性、(2)多量の放射性物質等を放出する事故への対策、(3)自然現象、(4)設計基準対象施設――に関し考慮すべき事項が示されたのを踏まえ補正を行ったもの。
 「常陽」は、高速増殖炉の基本特性である増殖性能を確認し、燃料・材料を開発する照射場として運転することを目指したナトリウム冷却の高速実験炉で、1977年に初臨界した。積算運転時間は約71,000時間と、大過なく運転実績を積み、増殖性能の確認とともに、燃料・材料の照射試験、高速炉の安全性実証、運転保守経験の蓄積、国際協力、技術者育成など、多様なニーズに応えてきた。
 また、2016年に政府が策定した「高速炉開発の方針」では、「常陽」を用いることで、炉心燃料関連技術など、高速炉特有の要素技術の開発について、既に廃止が決定した高速増殖原型炉「もんじゅ」を再開した場合と同様の知見獲得を図るとしており、早期の運転再開が求められている。
 今回規制委員会に提出された補正書は、安全対策と照射試験性能の確保を両立させる観点から炉心設計を見直したもので、「原子炉停止系統の独立2系統化」、「炉心燃料集合体の装荷体数削減(最大で85体から79体に)」が図られている。この新たに設計した「MK-IV炉心」は、熱出力が申請当初の14万kWから10万kWに縮小とされているが、原子力機構では、将来的な照射試験計画や、同出力の「MK-II炉心」による約18年にわたる運転・照射試験実績を踏まえたものと説明している。
 「常陽」の運転再開は2022年度末を目標としており、再開後は、照射試験機能を活用し、放射性廃棄物減容化・有害度低減、フランスの実証炉「ASTRID」の開発協力などに貢献することが期待されている。